ということは、ヒトは会社にとって最もリスクになる存在でもあるのです。
「問題社員」という言葉を最近よく聞きませんか?
問題社員とは
「問題社員」とは大きく分けて2種類の「問題」を抱えた社員ということができるでしょう。
- パフォーマンスが低いという問題
- 非常識な行動で会社や他人に迷惑を掛けるという問題
いずれも業績や信用度といった面に大きな悪影響を及ぼし、会社として何らかの対応をしなければなりませんが、人の問題であることを考慮すると人事部主導で対応しなければなりません。
問題社員への対応
問題社員には2種類あるというお話をさせていただきましたが、人事部の対応としてはそれぞれ大きく異なる対応が求められます。
なぜならば、それぞれ原因が異なるからです。
「パフォーマンスが低い」という問題の原因は、「本人側」にあるのか、「会社側」にあるのかに分けることができますが、「非常識な行動」という問題の原因は「本人側」にしかないと考えるのが妥当です。
会社側に原因があると考えられる場合は、当然人事部が対応しなければなりません。
一方、本人側に原因がある場合も採用した以上は社員であり、人事部が対応することになりますが、その内容は全く異なるのです。
それでは、具体的にどのように対応すれば良いのでしょうか?
パフォーマンスが低い問題社員への対応
残念ながら、仕事への意欲は高いものの、結果を出せない社員はいるものです。
このような場合は「会社側に原因があるのではないか」という前提のもと、人事部主導での対応が求められます。
適材適所になっているか
配置転換によって、見違えるような結果を出す社員を見たことがないでしょうか。
人事部は面談などを通して、本人が持つ能力を最大限に活かすことができる配置になっているかどうかを確認する必要があるのです。
育成方法は適切であったか
育成は「現場任せ」になっていなかったでしょうか。
少数精鋭の中小企業においては「人材育成」が配属部署単位で行われることが多いはずです。
しかし、現場の先輩社員にとっては本来の仕事が優先であり、育成は二の次になる傾向があるのです。
このような状況ではパフォーマンスを上げることができなくて当然であり、人事部によるチェックが必要です。
上司は何をしていたのか
上司の態度や管理能力は適切だったでしょうか。
上司の言動は部下のモチベーションに大きな影響を与えることは周知の事実です。
例えば、パフォーマンスの低い社員が特定の部署に集中するような事態は要注意なのです。
以上のような対応を行ったにも関わらず、パフォーマンスに問題がある場合は人事評価を通じて他社員との「差」を出していくべきでしょう。
一方、本人に仕事への意欲がなく結果的にパフォーマンスを発揮しようとしないケースもあるでしょう。
パフォーマンスが低い原因は本人側にあるのです。
この場合、人事部は厳しい態度で臨む必要があります。
具体的な対応は、「非常識な行動」という問題社員への対応と併せて、次章でお話したいと思います。
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非常識な行動をとる問題社員への対応
原因が本人側、本人の素行にある場合は、「解雇」も念頭に置いて、厳しい態度で臨まなければなりません。
しかし、現在の法律では、社員を簡単に解雇することはできないのです。
過去には「会社のパソコンを使った私用メール」や「社内外での経営批判、経営者個人に対する誹謗中傷」を繰り返す社員に対して、再三の注意を行ったにも関わらず反省の意思を示さないことから「懲戒解雇」したところ、裁判で「解雇が無効」となる判例も存在します。
このような場合、会社、人事部に求められるのは、段階的な対応なのです。
具体的な対応例は下記の通りです。
- 口頭での注意
- 2~3ヶ月間の改善状況チェック(その間も必要に応じて注意を繰り返す)
- 改善が見られない場合、書面での注意
- 2~3ヶ月間の改善状況チェック(その間も必要に応じて注意を繰り返す)
- 改善が見られない場合、懲戒処分(ただし、解雇ではなく、戒告、譴責、減給、出勤停止など)
- それでも改善が見られない場合、解雇
実際には契約している弁護士などとも相談した上での対応になると思いますが、いくら問題社員とは言え、これだけの段階を踏まなければならないのです。
問題社員による本当の「問題」とは
これまでの内容から、問題社員には多くの「時間」と「費用」を掛けた対応が必要だということがお分かりいただけたと思います。
適切な対応なくしては、会社業績や信用度に悪影響を与えてしまう大きな問題なのです。
しかし、本当に問題はそれだけでしょうか?
本当に問題なのは、「パフォーマンスが高い社員」、「まじめに勤務してる社員」への悪影響なのではないでしょうか。
つまり、適切な対応を取らなければ、会社に残って欲しい社員が辞め、辞めてほしい社員が残ってしまうのです。
結果が出ない社員との給与がそれほど変わらなければ、結果を出している社員はどう思うでしょうか。
隣にまともに働かない社員がいるにも関わらず、何の対策も打たない会社に対して、まじめに勤務している社員はどう感じるでしょうか。
これは中小企業にとってまさに「死活問題」なのです。
まとめ
社員を雇用する以上、問題社員の発生は避けて通れないかもしれません。
しかし、発生を極力少なくすることはできるかもしれません。
その鍵を握るのが人事制度ではないでしょうか。
- 採用における面接者のスキルアップにより、問題社員の入社を少なくすることができます。
- 育成プログラムを整備し、さらに育成を仕事として位置づけることでパフォーマンスを上げることができます。
- 正しい評価、それに基づく賃金制度により、社員のモチベーションを維持、高めることができます。
今一度、自社の人事制度を見直してみてはいかがでしょうか。
会社に不可欠なものとして「ヒト・モノ・カネ」という表現がありますが、中でもヒトが最も大切だという認識を持つ経営者が多いのではないでしょうか。