こうした柔軟な働き方を重視する従業員も増えており、人事領域においても従来の対面研修の他にe-ラーニング(インターネットを利用して学ぶ学習形態)を導入する企業も増えています。
しかし、e-ラーニングが普及している一方でさまざまな弊害も発生しています。
本記事では、中小企業の管理職を対象に現場視点での管理職研修を提供している、大橋高広がe-ラーニングの問題点やe-ラーニングが向いている研修内容、中小企業が生き残る鍵である管理職に本当に必要な研修を解説します。
※本記事では、企業が実施する社員向けの研修手段としてのe-ラーニングを前提に進行いたします。
e-ラーニングが向いている研修とは
e-ラーニングとは、パソコンやスマートフォン、タブレットといったデバイスからインターネットを通じて電子化された教材や研修資料を学ぶ学習形態です。
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症対策で、非接触の学習形態として大企業・中小企業問わず、多くの企業に拡がりました。
インターネット環境さえあれば、時間・場所を問わず、受講でき、実施する企業も研修会場や研修講師の手配をしなくて済むため、コスト削減効果もあります。
※e-ラーニングは、事前に電子化された動画や資料をもとに学習が進みます。
e-ラーニングの課題・問題点
e-ラーニングの課題・問題点は、研修カリキュラムが事前に電子化されており、従業員が受動的に受講しなければなりません。
管理研修をはじめ、人事部が実施する研修の多くはコミュニケーションを中心としたケーススタディや受講している同僚との意見交換、グループワークを通じて学ばなければ意味がありません。
また、e-ラーニングは定型化された学習内容が中心となります。新人研修の場合、名刺の渡し方や挨拶の仕方、管理職研修(マネジメント研修)の場合はマネジメントの基本的な考え方など座学を中心とした理論学習となります。
さらにe-ラーニングの多くが「会社から受講させられる」といった感情が強くなりがちで、受講者の多くは受講自体が「めんどくさい」と考え、講座を早送りで飛ばす、流しっぱなしにして別作業をする、カンニングするといった不正に走りがちです。
多くのe-ラーニングは「早送りができない」「受講を飛ばせない」「受講後のテストで理解度を測り、不合格の場合はフォロー講座を受けさせる」といったさまざまな対策をおこなっていますが、e-ラーニングは従業員が受け身で参加するものであり、そもそも「会社の命令だから仕方なく受けている」という意識がある限り、どんな対策をしても高い効果を得ることは難しいといえます。
今後、中小企業が継続的に成長するために欠かせない管理職へのマネジメント研修(管理職研修)は、部下との信頼関係の構築やコミュニケーションの取り方、部下を評価するための普段からの接し方などは座学では難しく、研修中に同僚との意見交換やグループワークを通じてマネジメント力やコミュニケーション力の大切さを学んでいかなければなりません。
上記の理由により、e-ラーニングは意識改革が必要な研修ほど効果が低いと言えます。
管理職研修のe-ラーニングの多くが矛盾する
近年、法人研修としてe-ラーニングを提供する機会が増えており、その中には定型化ができない管理職研修をe-ラーニングで提供している研修会社が増えています。
その多くが、管理職に必要なコーチングやチームビルディング、部下との円滑なコミュニケーションが重要と掲げて、研修内容に盛り込んでいます。
また、中には「部下から本音を聞き出すためには、1on1のコミュニケーションが大事だ」と力説するe-ラーニングも存在します。
しかし、1on1のコミュニーションが機能していれば、管理職と部下との間に不協和音は起きず、とっくの昔に職場の問題は解決しているはずです。
しかし、いまだに上司と部下との人間関係が職場の問題の原因として挙げられていることを考えると、研修内で「1on1のコミュニケーションが大事」と説うことではなく、「1on1のコミュニケーションはどうやっておこなうのか」が大事であり、研修中に参加者同士のグループワークや意見交換が大切となります。
そのため、電子化された研修内容を長時間動画で流し続け、参加者ひとりが黙々と課題をこなす形式のe-ラーニングには高い研修効果が望めないことは明らかです。
忙しい管理職だからこそe-ラーニングは適していない
e-ラーニングは「時間と場所に縛られず、従業員も参加しやすい」、「研修講師や会場を手配しなくても済むため、経費を削減できる」と思い、導入する中小企業の経営者が増えています。
特に少数精鋭でプレイングマネージャーが多い中小企業では、常に忙しい管理職は時間の合間を縫って、参加してくれると考えがちですが、実際は業務時間を使ってまでe-ラーニングへの参加を促す会社に不満を持っています。
業務として管理職研修を実施するのであれば、管理職(管理職候補)が研修効果を実感し、現場で活かせたかどうかが、研修を実施する最大の目的です。
オンラインLiveを活用した管理職研修
出社勤務以外にも在宅勤務を継続している企業にとって、e-ラーニングのようにインターネットを通じて受講できる研修は従業員の研修会場への移動時間や会場レンタルなど経費削減にもつながるため、需要が高いと言えます。
しかし、先述した通り、e-ラーニングは受講者同士のコミュニケーションやグループワーク、質疑応答が多い管理職研修には不向きです。
そこで活用したいのがオンラインLive研修(いわゆるオンライン研修)です。
オンライン研修とは、Web会議システム(ZoomやGoogle Meet)を用いて、おこなう研修です。Webセミナーやウェビナー(WebとSeminarを組み合わせた造語)とも呼ばれています。
研修講師や進行役がインターネットを介して、拠点ごとや個人ごとに参加し、決まった時間にリアルタイムで受講します。
オンライン研修では、Web会議システムの機能であるグループ分けができるため、受講者同士によるグループワークやチャットによる質疑応答が可能です。
また、対面研修と同じように研修講師によるフィードバックも可能です。
また、オンライン研修は同時間に同じ研修内容を進行するため、原則、受講者は顔出しの参加が必須となります。
グループワークでは、相手の顔を見ながらでおこなわなければ、臨場感も感じられず、コミュニケーションの実践につながりません。
リアルタイムの進行に加え、顔出しによる参加、そしてグループワークがスケジュールに盛り込まれているため、受講時に別作業をおこなう、真剣に受講しないといった不正ができません。
安いだけで選ばない!管理職研修は費用対効果で選びましょう
e-ラーニングは教材や動画など電子化された資料を使用するため、手軽に受講できる反面、従業員の不正が発生しやすく、グループワークや質疑応答といった相互コミュニケーションが発生しやすい管理職研修などはオンラインLive研修が適しています。
e-ラーニングは導入コストも安く、電子化されたコンテンツが豊富なため、会社の状況や従業員のレベルに応じて、研修内容を選択できます。
しかし、そもそもe-ラーニングは参加する従業員のモチベーションも低く、不正が起きやすいため、費用が安くても費用対効果は低いといえます。
一方で、対面による研修と同じように研修講師や進行役がいるオンラインLiveセミナーではコミュケーションを中心としたグループワークや質疑応答を実現しながら、従業員の研修会場への移動コスト(交通費)や会場のレンタル費用を削減できます。
費用はe-ラーニングよりも高くなりますが、研修後の効果を考えれば費用対効果は高いといえます。
オンライン研修を謳ったe-ラーニングにご注意を!
オンライン研修を謳っている会社の中には、進行役だけがリアルタイムでおこない、研修講師による研修は録画を流している、e-ラーニングに近いオンライン研修を提供している研修もあります。
e-ラーニングに近いオンライン研修は質疑応答も他の担当者が受け持つなどうまく役割分担をおこなっていますが、実際はe-ラーニングとほぼ近い内容(電子化された座学に近い内容)になりやすく、臨場感に欠けます。
また、実際に進行している研修に沿った臨機応変な対応ができず、ただ研修講師が話している動画を見るだけという、まさにe-ラーニングと同じように効果が低い研修となるため、注意しましょう。
管理職研修では、研修の多くがグループワークの実施や質疑応答が盛り込まれていることが大切です。
研修講師と受講者の相互コミュニケーションが発生しそうなカリキュラムのオンラインLive研修を選ぶようにしましょう。
まとめ
管理職研修のように、コミュニケーションを中心としたグループワークや質疑応答が必要な研修にはe-ラーニングは適しません。
しかし、多様な働き方が浸透している現在において、対面研修だけでは従業員の要望に沿えない可能性があります。
そのため、どの場所からでも参加でき、対面研修と変わらない質の研修を実施するにはオンラインLive研修を利用しましょう。
多様な働き方が浸透する中、テレワーク(在宅勤務)も広がり、出社勤務と在宅勤務の併用する企業、そのままテレワーク勤務に移行する企業、そして出社勤務に戻した企業などさまざまな働き方が実現しています。