企業として成長する上でも、前年比よりも高く目標を設定することは当然ですが、個人目標においては少し事情が異なります。
昨年対比は組織目標においては機能しやすいですが、従業員ひとり一人を考慮すると、各々環境が異なるため、配慮が必要です。
今回は個人も組織も成果をだせる目標設定の方法を中心に解説します。
- 昨年対比の目標設定は"終わりのないマラソン"のようなもの
- 昨年対比の目標設定は心理的負担を高め、頑張らない社員と思考停止に陥った管理職を生み出す
- 過去最高対比の目標設定は”1on1ミーティング”など絶対評価とも相性がよい
- 過去最高対比の目標設定は”好成績の社員に依存しない骨太な組織運営”が可能
昨年対比を目標設定にしてはいけない理由
個人の目標において、前年対比(昨年対比)を基準に目標設定をしてはいけない理由がいくつかあります。
- 右肩上がりの目標達成は永遠には続かない
- 年対比目標のギリギリを達成しようとする社員が現れる
- 管理職の思考停止が加速する
昨年対比は、自発的に成長し、成果を出させるためのモチベーションを下げてしまう可能性があります
ずっと右肩上がりはそもそも不可能
目標を昨年対比で設定することは、ずっと右肩上がりで売り上げを伸ばすことになります。しかし、そうした右肩上がりの目標はいずれ達成ができなくなります。
プロダクト(商品)ライフサイクルが短期化し、競争環境が激化している世の中では、企業や事業でも永遠に右肩上がりに成長することが難しいという認識は誰もが持っています。
しかし、なぜか個人の目標だけ昨年対比で設定され続けており、従業員は"終わりのないマラソン"を押しつけられていると言っても過言ではありません。
また、こうしたマネジメントが起きるのには、企業が期待するキャリアパスと従業員が望むキャリアパスの認識のズレも大きく影響しています。
1on1ミーティングを実施せず、従業員が望む労働環境や目標を無視した昨年対比の目標設定は、優秀な人材の退職につながります。
頑張らない社員が生まれる
昨年対比による目標設定は、目標を達成した社員が必要以上に頑張らないという意識を植えつけてしまいます。
社員を成長させる上で、前回達成した目標よりも高い目標を課すことは当然ですが、成長するにあたり、どんどん目標が高くなっていくことは心理的負担を増大させます。
そのため、目標設定では、営業成績以外の項目(人材の育成やマネジメント能力の向上など)をつけた上でバランスをつけなくてはなりません。
また、昨年対比の目標設定だと達成できなかった時の従業員の心理的負担を考慮できなくなります。
こうした体験は管理職よりも現場の社員が一番わかっている(結果的に自分のクビを締めることになる)ため、普通の社員であれば、昨年対比の目標設定が前提となった場合、昨年対比の目標のギリギリを達成しようと考えます。
そのため、突出した結果を出す社員が徐々に減っていき、結果的に組織目標の達成度も鈍化していきます。
思考停止の管理職が増える
一見、昨年対比はわかりやすい目標設定のため、管理職のマネジメントコストが削減され、経営陣にも納得が得やすいといえます。
しかし、昨年対比による目標設定は、現状の市場環境や景気、チームメンバーの育成など管理職として考えるべき内容を放棄させるきっかけにもなります。
特に(プレイングマネージャー)管理職の頑張りだけで補完できる組織目標の場合、注意が必要です。
最終的に管理職の頑張りで組織として目標が達成できた場合、本来は成果を出せるはずの社員の育成や軌道修正が疎かとなり、結果的に組織としての成長が止まってしまいます。
右肩上がりも目標設定は、成果を出せなかった原因すらも見誤ることとなり、真の解決につながらず、管理職のマネジメント能力にも低評価を受ける可能性があります
過去最高対比で目標設定を行う
成果を出す社員や適切なマネジメント能力を持つ管理職を輩出するためには、目標設定を過去最高対比で行う必要があります。
前述したとおり、企業・個人の業績は、市場環境や景気に大きく左右されます。
そのため、前年は「市場の追い風や景気が功を奏して、たまたま大きな業績を達成した」ということも珍しくありません。
また、目標を達成できなかった社員に対して、前回の目標よりも大きな目標を達成しなければならず、心理的負担の増大に加え、適切なマネジメントができない恐れがあります。
しかし、過去最高対比の目標設定は、以下のメリットを生み出します。
- 従業員ひとり一人の特性に合わせた人材育成が可能
- 好成績を上げる社員に依存しない組織運営が可能
- 市場や景気、社員の特性など多面的な視点からマネジメントを行う管理職を生み出す
- 目標を達成できなかった社員の心理的負担を和らげ、再起のチャンスを与えられる
昨年対比による目標設定は多くの日本企業が採用してきた相対評価に起因します。
近年では、1on1ミーティングなど社員が自発的に軌道修正し、自らの目標を達成していくように促すマネジメントが求められています。
相対評価に偏り過ぎず、絶対評価を基準とした人事評価が管理職や現場の社員の育成につながります。
高い目標を掲げることは、社員に対して更なる成長を促す効果的な策にもなりますが、達成した社員にとっては"終わりの見えないマラソン"に見え、達成しなかった社員にとっては心理的負担が増え、"次なる目標が高すぎるハードル"に移ります。
この過去最高対比の目標設定尾の考え方は、5Sを目標にしがちなバックオフィスの目標設定にも効果があります。
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目標設定は過去最高対比に設定する:まとめ
目標設定は企業と社員の成長に欠かせないものですが、昨年対比の目標設定は組織も社員も疲弊させてしまいます。
今後、中小企業は後継者不足や人材不足による大廃業時代に突入し、組織運営がますます難しくなります。
過去最高対比による目標設定を導入し、優秀な人材の定着や成果を出せる社員の育成を行い、骨太な組織を作り上げましょう。
企業や事業が目標を設定する際、基準となる数値が昨年対比です。