人事評価は、企業の目標や方針に沿っており、かつ社員が納得できるものでないとなりません。
社員の納得を得るためには3つのポイントを押さえると効果的です。
- 評価者と被評価者の明確化
- 評価期間の設定
- 人事評価エラーへの理解
評価面談には、最適な人事評価シートは不可欠です。
記事の最後には、大橋が実際に使用している大橋高広式人事評価シートを無料でプレゼントいたします。
人事評価に必要なことは「評価者」への見方
公平かつ社員の納得を得る人事評価は、評価者が鍵を握っています。
一般的に社員を評価する職務は管理職が担います。
しかし、日本企業の多くは、管理職向けの社員育成や人材評価への教育を実施していません。
社風に合った人事評価制度はあくまで人材育成のツールに過ぎません。
管理職をはじめ、評価者自身の適切な人事評価能力があって、はじめて機能します。
そのため、管理職への教育が欠かせません。
適切な人事評価の実施には、管理職(評価者)の育成が不可欠です
そのことを踏まえた上で、公正かつ客観的な人事評価を行うには、以下のステップを踏みましょう。
評価者と被評価者を明確にし、最適な評価者を選定する
自社に合った適切な評価期間を設定する
人事評価エラーへの理解を促し、評価者への教育を行う
それでは、解説します。
評価者と被評価者の明確化
社員の納得を得るには、2人以上の評価者による多面評価が効果的です。
1次評価者の選定では、必ず被評価者の日常(働きぶりやコミュニケーションが多い等)を見る機会が多い人を選定します。
普段から自分の行動を見てくれている人が評価者に立つことは、社員の納得感を得られる最も効果的な方法です。
そのため、以下の条件を満たす評価者を選定しましょう。
- 被評価者が属する部署の管理職
- 被評価者を公平に扱える人
- 被評価者から信頼を得られている人(どんな評価でも納得できると信頼が厚い人)
人数が少ない中小企業では、社長が二次評価者として担当することも問題ありません。
公平かつ客観的な人事評価に有効な手法に360度評価があります。
一方で、異動が少ない中小企業では360度評価はメリットよりもデメリットが多くなる可能性があります。
- 管理職の役割の希薄化
- 人数が多い非管理職が有利になり、管理職の対応力が低下する
- 周囲からの評価が低い場合、被評価者に禍根を残しやすい
このように360度評価は従業員数が少ない、コミュニケーション機会が多い中小企業では監視体制の強化につながりやすく、閉塞感を生みやすくしてしまいます。
最悪の場合、コミュニケーションの崩壊を招く危険性もあるため、導入には細心の注意を払ってください。
被評価者の上司、同僚、部下、他部署の担当者など評価者と関わりがある複数の人材を評価者に指名し、被評価者を評価する手法です。
評価期間の設定
評価期間とは、人事評価対象となる期間です。
人事評価は評価期間の事実だけ評価することが原則です。
評価期間外の事実を合わせて評価することは、現在努力している・成果を上げている社員の評価が著しく棄損され、モチベーションの機会損失にもつながります。
▼評価期間によるメリット・デメリット
評価期間 | メリット | デメリット |
1ヶ月・3ヶ月 | 短期間による評価・処遇を決定するため、成果と報酬の連動性を高め、成果主義の風土を醸成できる | 長期的な視点(経営理念・経営計画)を見失い、目先の成果に行きがちとなる |
6ヶ月 | 会計期間の上期・下期を重視する社内風土や企業と相性が良い。年度の中間評価を実施することで、次の半期への軌道修正、体制づくりが可能 | 半期単位での成果を重視するため、短期間での目標に取り組みがちとなる |
12ヶ月 | 会計年度の業績にこだわる社内風土と相性が良い | 評価期間が長いため、社員の努力と報酬の連動性が薄れる。期首の目標と状況変化に乖離が広がり、取り組みへの意味合いが希薄する |
一般的に運用のしやすさを考慮すると、多くの企業が「4~9月」、「10月~3月」の6ヶ月の評価期間を選択しています
人事評価エラーへの理解
人事評価エラーとは、評価者の考え方や見方によって、公平公正かつ客観的な評価ができず、本来あるべき評価が変わってくる現象です。
社員の納得を得る評価をするためには、評価者の教育が欠かせません。
まずは評価者が無意識のうちに人事評価エラーをしていないか自覚してもらう必要があります。
大橋が考える主な人事評価エラーは10個あります。
▼よくある人事評価エラー10選
人事評価エラー / 内容・対策 | 内容 | 対策 |
ハロー効果 | ひとつの評価ですべての評価を判断してしまう現象 ※1つでもよい評価があれば、すべて良い評価に。1つでも悪い評価があれば、すべて悪い評価になる現象) | ・各評価基準に対して、客観的に評価する ・観察と分析により、具体的事実に基づき評価する ・被評価者への先入観をなくす |
寛大化傾向 | 自分がどう見られるかを気にして、実際よりも甘い人事評価になる傾向 ※人事評価に自信がない、部下に嫌われたくない等の心理が働く | ・甘い評価は部下の将来的な不利益になることを自覚する ・評価基準を正確に理解する ・評価者に人事評価のやり方を教育し、評価者自身の自信を醸成する ・部下との公私のけじめをはっきりつける |
厳格化傾向 | 人事評価が実際よりも厳しくなる傾向 | ・評価基準を正確に理解する ・十分な観察と分析を行う |
中心化傾向 | 評価が中央に寄り過ぎ、優劣の差があまりはっきりしない傾向 | ・日常における緻密な観察を心掛ける |
極端化傾向 | 評価に差をつけようと、評価結果が極端にバラけてしまう傾向 | ・日常における緻密な観察を心掛ける |
対比誤差 | 評価者の得意分野が厳しくなり、不得意分野が甘くなってしまう傾向 | ・評価者の主観による判断を排除し、客観的な評価をする ※「自分だったら」という考えをなくす |
逆算的傾向 | 被評価者の処遇を念頭において、総合評価から逆算して評価を実施する傾向 | ・評価後の処遇を判断基準にしない ・勘案すべき事項は人事評価とは別に検討する |
知識編重 | 知識を基に他の能力があると判断して評価する傾向 | ・評価基準毎に客観的に評価する ・知識の有無はひとつの能力と理解する |
期末効果 | 評価判定時期に近い事実に左右されて評価する効果 | ・評価期間内の評価事実を正確に記録する ・評価判定時期にきちんと振り返る |
相対比較 | 他社員との比較で業績・能力を評価する傾向 | ・評価基準を基にひとり一人きちんと観察する ・人事評価の原則は絶対評価である旨を認識させる |
社員の納得を得る人事評価は、人事評価エラーを起こさない評価者の選定のほかに教育も大切です。
成果を出す社員を育成する上では、管理職の教育が欠かせません。
大橋高広式人事評価シートを無料プレゼント
大橋が推奨する人事評価は最低2人以上の評価者で行います。
しかし、人事評価は評価者と被評価者との1対1とのミーティングが原則です。
そのため、面談は複数回行います。
一次面談、二次面談とその都度、面談機会を設定し、面談を行ってください。
実際に大橋が使用している人事評価シートは業績評価、評価項目、評価基準、ウェイト(難易度)を記載しています。
また、本人評価、1次評価者、2次評価者の記載欄がひとつになっています。
被評価者のコメントや1次評価者(被評価者の日常を観察している評価者)のコメントを参考にしながら、公平かつ客観的な評価が可能となります。
社員が納得する人事評価:まとめ
優秀な社員の定着・育成には、社員が納得できる公正かつ客観的な人事評価が不可欠です。
しかし、人事評価には評価者の心情を排除し、定められた評価基準に従って、行わなければなりません。
そのためにも管理職をはじめ、評価者の評価能力を高める人材育成に注力する必要があります。
- 2人以上の複数の評価者で、評価基準に従って、客観的に評価する(中小企業の場合、360度評価の導入には慎重になる)
- 自社に合った評価期間(「運用のしやすさ」から6ヶ月が一般的)の設定を行う
- 人事評価エラーへの理解を促すために管理職向けの教育(研修)を行う
近年、人事部は経営の中枢まで入り込み、中長期的な経営計画を達成するために人材育成・人材採用、さらには社内風土や人事評価制度の見直しを含む経営改革に参画する機会が増えています。
大橋の今までの人事コンサルタントの経験を活かした人事評価シートが、御社の人事改革に役立てば、幸いです。
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