新入社員研修の目的とは?現場で活かせる内容で成功させる5つの方法

新入社員研修の目的とは?現場で活かせる内容で成功させる5つの方法
大橋高広

皆さんの会社では、新入社員研修でどんな事を教えていますか?

企業ごとに、内容やそのボリュームは違っていると思います。

しかし、皆さんが今実施している研修は、新入社員や現場のことを考えて作られている研修でしょうか?

その研修で、新入社員は現場へ出た後に安心して働けるでしょうか?

今回は、新入社員研修を実施する目的と、その目的をより確実に達成させる方法を知っていただき、来年へ向けて研修のプログラムや内容を見直してもらう機会にしていただきたいと思います。

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新入社員研修 3つの目的

そもそも新入社員研修の目的とは何でしょうか?

私は、

  • 社会人としてのビジネスマナーを身につける
  • 企業理解を深めロイヤリティを醸成する
  • 実務の基本が習得できる

この3つだと考えます。

社会人としてのビジネスマナーを習得

例えば、「挨拶やお辞儀の仕方」といった基本的なことから、ビジネスの場で必要な「名刺交換」などです。

個人間の信頼関係を構築したり、企業イメージを守るためにも、新社会人が最初に身に付けるべきスキルといえるでしょう。

企業理解とロイヤリティの醸成

入社後すぐに企業理解とロイヤリティの醸成に取り組むことで、配属後のモチベーション向上や早期離職を防ぐメリットがあります。

企業の歴史や取り組みについて話したり、これまでどのような困難をどのように乗り越えてきたかを伝えることで理解が深まります。

とくに後者については、ベテラン社員で会社の事をよく知っている人が話すと、聴く者を引きこみロイヤリティの醸成に繋がります。

実務の基本を習得

オペレーションの基本やルールを徹底して教えることで仕事の土台作りをしますが、それだけではありません。

新入社員が現場へ出た時になるべく違和感やギャップを感じないように、工夫をすることも研修担当者の役割です。

たとえば、

  • 現場に近い環境をつくって研修をする
  • 現場でよく起こるイレギュラー対応を想定した研修をする

ということです。

残念な新入社員研修プログラム

研修の目的を達成させる方法についてお話しする前に、新入社員の心が離れてしまう残念な研修例を5つ挙げます。

まずは皆さんの会社で、このような研修が行われていないかをチェックしましょう。

外部講師に任せきりの研修

新入社員研修をはじめ、研修を外部業者へ委託している企業もあるでしょう。

相手はプロのため研修の内容も分かりやすく的確ですし、研修時間が超過してスケジュールが押すこともないと思います。

しかし、研修をすべて外部講師に頼ってしまうのはあまり良くありません。

それは、テーマによっては教えたいポイントが新入社員へ伝わりづらいからです。

また、外部講師と新入社員の関係は基本的に研修日のその場で完結しますので、新入社員が研修後に質問したいことがあっても、講師へ聞いたり頼ったりという事がなかなかできません。

マインドセットに寄りすぎた研修

これは、サービス業や飲食業の会社、また営業に配属される新入社員へ向けた研修で起こりがちなことです。

たとえば、

  • 自分の目標や夢を、先輩社員や同期の前で大きな声で叫ぶ
  • 研修プログラムの最終日に同期全員で海へ行き、夕日に向かって走る
  • やれば必ずできる、といった精神論が大半の講義

といった研修のことです。

マインドセットは大事ですが、現場で実務に就けばマインドセットや精神論だけでは仕事をこなせません。

このような研修の雰囲気に冷めてしまったり、恐怖心を持ってしまう新入社員が出てくることが懸念されます。

現場で活きない実務研修やロールプレイング

たとえば、接客業などに就く新入社員に対しては、ロールプレイングを実施している企業も多いことでしょう。

しかし、接客の流れやルールを完璧に覚えたとしても、学んだことが十分に活かされないケースがあります。

ロールプレイングが実際の現場をイメージできたものではなかったからです。

そのため、現場へ出た時に戸惑ったり、上司や先輩から「遅い!」などと言われることがあるのです。

私も実際、「新入社員研修で習ってきた内容が現場では通じないことがよくある」といった現場社員の声をよく聞きます。

現場でよく起こるお客様対応や、実際のスピード感などもある程度イメージした研修でないと、つまずく原因になってしまいます。

奇抜すぎる研修

一般的な研修の他に「ユニークな新入社員研修」として、近年、企業ごとに少し変わった研修を導入している傾向があります。

その内容は、企業の一員としての意識を醸成できるもの・営業業務を行ううえで度胸をつけられるものなど、様々です。

しかし、あまりに企業目線で奇をてらうような内容になってしまうと、実施する側の事を考えていない度が過ぎた研修になってしまうこともしばしばです。

唐突に、奇抜すぎる研修に参加させられた新入社員の中には、上手くできずに自信を失くしてしまう人や、早くも入社前のイメージと大きくギャップを感じてしまう人が出てくるでしょう。

研修プログラム終了後はほったらかし

新入社員研修に時間や費用を投資する企業は多いでしょう。

しかし、新入社員研修のプログラムが全て終了すると、それまでの集中力がプツンと切れ、その後の教育が現場に任せきりになってしまい、新入社員をほったらかしにしてしまう事も多々あるのではないでしょうか?

新入社員研修では熱心だった本部の社員に対して温度差を感じ、不信感や残念な気持ちを持ってしまう新入社員が出てくると考えられます。

新入社員研修の目的を達成させるために

先述した①~⑤の例に共通して言えることは、

  • 現場と連携を取れていない
  • 新入社員の目線で考えられた研修ではない

ということです。

私は、3つの目的を達成させるためにはただ研修をこなすのではなく、「新入社員と現場に目線を合わせること」がカギだと考えます。

新入社員研修は、現場で働く手前の一番大事な時間です。

ここで自信をつけられるかどうかが、現場で良いスタートをきれる人とそうでない人を分けるのです。

それでは、3つの目的を達成させるための方法についてお話しします。

外部講師に任せきりの研修→教育担当者も一部研修する

社内で実施したい研修については、教育担当者が外部講習に参加して研修のやり方や考え方を学びましょう。

その際、部下の指導経験がある人物が参加すると「研修のどこで理解が詰まるか・どの順番で教えたら良いのか」イメージしやすいです。

メリット
  • 研修の内容を自分たちで決められ、より自社に適した内容で教えることができる
  • ルールなどの変更があってもすぐに資料の改訂ができ、常に正しい情報を伝えられる

ポイント

  • どうすれば研修の内容が最大値で伝わるかを考える
  • 外部のプロに頼る部分・社内研修にする部分を明確に分ける

マインドセットに寄りすぎた研修→基準を作って研修を行う

マインドセットだけで現場へ出た新入社員は、基本を疎かにします。
その結果、現場ごとのハウスルールが出来上がり現場の秩序が崩壊してしまうのです。

そのため、実務の基本オペレーションの習得にも時間をかける必要があります。
マニュアルや基準をつくったうえで研修を実行しましょう。

メリット
  • やって良い事悪い事の基準が分かる為、現場であらゆるイレギュラーに対応できるようになる
  • 一貫したオペレーションを実践することで、顧客の信頼を得ることができる

ポイント

  • 「根性論」が社内で飛び交っている企業は要注意。現場で起こっていることは、研修の場においても同じことが起こる
  • 「基本的な事」を「現実的に」「根拠のある方法」で教えること

現場で活きない実務研修やロールプレイング→実際に現場を見てもらう

研修の前に現場へ足を運び、先輩社員の接客を観察させましょう。

この時、接客中に発生したイレギュラーはメモさせておきましょう。
現場で見たことは研修の場で共有してもらい、その対応方法を教えたりロールプレイングをさせると効果的です。

メリット
  • 実際に現場を見てから研修をすることで、新入社員がよりスムーズに現場へ入ることができる
  • イレギュラー対応を勉強でき、心構えができる 

ポイント

  • イレギュラー対応については、よく発生することにポイントを絞って教えること
  • 現場に足を運べるようなプログラムが組めない時は、映像で接客の様子を見せるのも効果的 

奇抜すぎる研修→既存の研修を見直す

奇抜な研修を考えるよりも、既存の研修プログラムのブラッシュアップをする方が先です。

研修後は、理解度を確認するアンケートをとり、集計結果を元に理解度が低い部分のボリュームを増やす(理解度が高い部分についても見直す)といった振り返りや改善をしましょう。

メリット
  • 自社の現場や新入社員に向けて、最適化した研修を実施することができる

ポイント

  • 現場の社員に、新入社員の受け入れ時に困ったこと・研修に関する要望をヒアリングをするのも良い。
  • 研修のブラッシュアップは想像以上に手間がかかる。片手間に考えていると進まないと心得ること
  • ブラッシュアップの時は、変更した理由が分かるようにビフォーアフターを記録しておく

研修プログラム終了後はほったらかし→研修後も交流の場を設ける

研修プログラム終了後も、サポートをしっかりしてあげましょう。

たとえば、

  • フォロー研修や懇親会の場を持つ
  • 研修担当者や人事担当者が現場に足を運ぶ

などです。

メリット
  • 同期が集まる場をこまめに設けることで、お互いの刺激になる
  • 「気にかけてもらえている」という実感がもて、仕事のモチベーションが上がりロイヤリティが醸成される

ポイント

  • 「仕事に慣れていない配属後すぐの時期」に現場へ行くと、新入社員が安心感を得られる
  • 研修はなるべく、勤務地ごとではなく一か所に集まれるようにする

まとめ

研修といえば、教える側が中心になって内容やタイムスケジュールを考えがちです。

しかし本来は、受講生側や、新入社員を受け入れる現場に目線を合わせなければ、せっかく実施しても身に付きませんし、現場で活かすことができません。

また、本社側の自己満足で終わってしまったり、新入社員がスタートでつまずいてしまうことがあります。

研修の目的を達成させ、さらに学んだことが現場でしっかり活きるためには、現場や新入社員に目線を合わせて研修を考えることや、研修受講者や受け入れ側である現場の声を聞くことが非常に重要です。

研修を実施する側・受ける側どちらにとっても良かったと思える研修ができるように、ぜひ研修担当者同士で話し合ってみてくださいね。

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    ABOUT US
    大橋 高広
    株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供