しかし、人手不足をはじめとした人材育成において、もはや人事部は「業務内容が売上に直結しない」、「評価されにくい」といった「縁の下の力持ち」の存在ではなくなっています。
本記事では、なぜこれからの時代に人事部の重要性が高まっていくのか、CHROという新たなキャリアやメリット、給与体系ついて、解説していきます。
人事部は出世コースといえる理由
結論から言えば、人事部は「出世コース」です。
近年、労務管理や総務といった役割も担ってた人事部は単なるバックオフィス機能だけでなく、企業が長期的かつ安定的に成長するために優秀な人材の獲得・定着に加え、企業の要といえる管理職の育成ニーズも強くなっています。
また、経営戦略に応じた人材戦略を実行できる「CHRO(最高人事責任者)」の需要が高まっています。
管理職の育成が急務
SaaSをはじめとしたタレントマネジメントや労務管理を機械的に行えるようになったものの、職場の問題を改善するためには、現場を担う管理職の育成が急務です。
企業を支える資源のひとつである「ヒト」は最も重要な経営資源であり、「ヒト」を扱う人事部はは、それだけ責任のある立場でもあります。
また、現場の問題を解決するには、上司の「聞き出す」技術、「共有する」技術、「改善する」技術が欠かせません。
人事部はバックオフィスという枠にとどまらず、管理職のスキル向上においても重要な役割を担います。
管理職の育成については、著書「リーダーシップがなくてもできる「職場の問題」30の解決方法┃大橋高広(日本実業出版)」で詳しく解説しております。
企業の多くは新卒採用の教育には熱心に投資する一方で、管理職の育成には十分な投資をしてこなかった経緯があります。
人事担当者は従業員を見る目や育てる力、そして企業全体を大局的に見る力を養うと同時に、今まで教育投資してこなかった管理職への育成にも注力しなければなりません。
そのため、今後は積極的に管理職とコミュニケーションを取りながら、職場の問題を改善し、マネジメントや経営といった立場にあたる人材へと成長していかなければなりません。
さらには、人事の大きな仕事のひとつである「採用」に加え、現在所属する人材をさらに優秀な人材へと再教育していく能力と責任を持つことが前提とされるため、人事部は出世コースの筆頭といえます。
CHROの需要が拡大
今後、管理職の育成を含めた人材育成の役割が増す人事部では、企業経営という企業の中心部に配属され関わっていくことになります。
経営層と直接コミュニケーションを取る機会が増し、経営戦略に応じた人事戦略を打ち出せる「CHRO(最高人事責任者)」という役職が注目を高めています。
上層部と共に重要な判断を下していく立場で働いていけば、おのずと経営視点や企業での発言力も増していきます。
そのため、人事部への配属はCHRO(最高人事責任者)という高度な経営マネジメントとしてのキャリアを歩んでいくこととなります。
人事部のキャリアパスについて
人事部として、どのようなキャリアパスがあるか、解説します。
企業規模によって異なりますが、人事担当者は以下のようなキャリアを歩んでいくこととなります。
大企業の場合
大企業の場合、人事部は業務が細分化されていることが多く、適性に応じて、人事部に配置されます。
新卒入社であれば、入社後の研修であれば適性を判断した上で人事部に配属されます。OJTやメンターを通じて、学びながら1~2年の業務を経て、採用や労務などそれぞれの担当業務に割り振られます。
人事部内で担当業務が変わることがあれば、それまでの業務を続け、メインの担当業務の中で主任として任命されるということもあります。
経験を積みながら、30代以降は人事課長(中間管理職)として課内を統括し、40代~50代で人事部長として大きな決定力を持つ、またはCHROとして経営に参画するというキャリアパスが考えられます。
中小企業の場合
中小企業においても、同じように研修の中で適性を判断された後に人事部へと配属されます。
しかしながら、大企業と中小企業の人事部とで違うポイントが2つあります。
大企業では、細分化された各業務に一人ひとりが携わっていきたますが、中小企業では人事部の人数が少ないため、一人が複数の業務を担当することがめずらしくありません。
最初はOJTを通じて業務を学んでいきますが、早い段階から様々な種類の業務をこなすことで、大企業より幅広い経験を積むことができます。
中小企業の多くは総務部兼人事部担当者としている組織体制が珍しくありません。
しかし、優秀な人材の採用・育成・定着を実施するには、人事部をつくり、専任の担当者を置かなければ、人事改革は進みません。
複数の業務を担当することで、各業務の内容を早いうちから把握できることになります。
その結果、早期から人事部全体を見る中心的な人材として、活躍の幅を広げていきます。
中小企業では、主任、課長、部長と昇進するまでの期間が短く、人事担当者としての実力を早いうちから高めることができます。
中小企業やベンチャー企業では、大企業よりも圧倒的に早い段階でCHROに昇進することもあります。
また、近年では外部より専門性の高いプロフェッショナルを招く外部人材の登用の需要が高まりつつあります。
副業や兼業を通じて、新たな人事のプロフェッショナルとして活躍するキャリアパスも生まれています。
人事部のクラス別給与体系
人事担当者の給与は当然ながら企業の規模や業績によって変動します。
今回は人事担当者としてのキャリアアップを目指す方向けに役職毎のでの年収をご紹介します。
一般社員
主に役職についていない社員が該当します。
平均して300万~450万円が一般的です。
新卒入社から働いている社員としては平均的なものになると思います。
企業規模に関わらず、この新卒入社や人事業務担当者ではあまり差が出ないと考えられます。
リーダー・主任クラス
このクラスが最も年収に差が出やすいといえます。
企業規模によっても変わってきますが、20代後半~30代の働き盛りの社員が多いため、給与の差が生まれるタイミングでもあります。
平均的な年収は400万~500万といわれています。
若いうちから活躍し、主任や課長代理の役職に就き、同世代以上の年収を貰う人もいれば、社歴が長い割には評価されず、役職につかないまま年収が上がらない人もいます。
ここで評価の上がる活躍ができるかどうかで、その後のキャリア形成と昇給にもつながります。
管理職
課長クラスにあたる人は平均年収600万円を超えてくると言われています。
次長(課長)や部長など更に上のクラスに就くことができれば、企業によっては1000万を超える高い年収を得る人も出てきます。
年齢の高さだけでなく、人事という職務の専門性の高さから必然的に経験値を求められる立場になります。
ゆえに管理職にあたる立場は40代以上が一般的です。
ただし企業規模や人によっては、優秀であれば、若いうちに管理職に就く可能性も十分考えられます。
CHRO(人事最高責任者)
CHROとは、Chief Human Resource Officerの略称であり、人事最高責任者を指します。
企業の経営幹部として、経営戦略に応じた人事戦略の策定や実行に責任を持ちます。近年では、企業規模に関わらず、CHROを新設し、優秀な人事担当者を社内外から経営幹部に招く事例が増えています。
企業規模にもよりますが、平均年収850万円~2000万円など幅広く責任の度合いや成果(採用人数や離職率の低下、人事制度改革における人的資源の有効活用等)によって、給与は変動します。
人事業務全般の把握はもちろん、管理職のマネジメント、経営と職場における調整、予算作成など高度な経営管理能力と現場における実務経験が必要となります。
人事部は出世コースである理由:まとめ
人事部は企業の人的資源をコントロールする管理部門の中でも重要な部署です。
これからの時代は、従来の人材マネジメントや労務管理だけでなく、経営戦略に応じた柔軟かつ迅速な人事戦略の策定・実施が不可欠となります。
そのため、今後の人事担当者は高度な専門知識、十分な業務経験が求められ、結果を求められます。
同時に企業・従業員双方の信頼も厚く、明確なキャリアパスやCHROを代表する十分な給与が期待できます。
時代に応じて、必要となる人事スキルを身に着け、従来のバックオフィスにおける古い体質から抜け出し、成果を重視した企貢献が求められます。
営業やマーケティングなど、売上に直結するような花形の部署に比べると、人事部は裏方から他部署の人々を支えるバックオフィスという考え方が中小企業を中心に未だに強く残っています。