中でも、企業側にとって思い通りにならないのは「ヒト」ではないでしょうか。
特に、中小企業は採用はとても難しいかと思います。
これを見てください。これは、2018年度の求人倍率です。
引用:厚生労働省 一般職業紹介状況(平成30年4月分)について
- 平成30年4月の有効求人倍率は1.59倍で、前月と同じ水準
- 平成30年4月の新規求人倍率は2.37倍で、前月に比べて0.04ポイント低下
求職者側の有利になるこの時代に、大手思考の若者が多くなかなか、中小企業に人材が流れてこないのが現状です。
さて、採用も難しいですが、育成や組織の中でのマネジメントから、不満等が出てしまい、ひいては、せっかく採用した社員が辞めてしまうというケースも多く見られます。
よく、「社員を辞めない方法はないか」といろいろ策を講じた社長様から相談を受けますが、特効薬はありません。
私がオススメするのは、人事部を作り、人事についての組織や制度設計を見直すことをオススメしています。
人事部を作り、社員が辞めなくなる人事評価を作ろうではありませんか。
\1on1面談のやり方が掲載された全13ページの研修資料付/
人事部を作ることの重要性
中小企業の多くは、総務の中に人事係を併設している企業が多いと思います。
「うちは、従業員が少ないから人事部なんてまだ作らなくてもいい」とおっしゃる方も多いです。
総務は労務管理をする部署であり、人事は人材育成や評価など求められる能力が違います。
人事において、社員の希望不満を把握する必要があるため、コミュニケーション能力が求められます。
「うちは小さいから、コミュニケーションは取れている」とおっしゃる方もいますが、本音は聞き出せているでしょうか。
ある一定の条件で聞くことで、社員の本音を聞くことが可能です。
企業にとって大切な「人材」を守るためにも人事の専門チームを置くことをオススメします。
実は、大抵の人事に対する課題は、人事部を作ることで解決できます。
人事評価はなぜ大事か
人事評価はなぜ大事なのでしょうか。
もし人事評価が明確な基準も設定しておらず、社長の判断で変えられてしまうものならどうでしょうか。
社員の給料や、ポジションなどが、どんなに仕事を頑張っていても、反映されなくなってしまいます。
頑張っても評価されないなら、モチベーションも下がり、仕事の能率も下がってしまいます。
また、自分よりも仕事ができない同僚の方が、さぼった挙句に、仕事時間が長いため、給料が多かったらどうでしょうか。
有能な社員ほど、会社を辞めてしまうでしょう。
人事評価は、頑張っている人をきちんと評価し、またどのような目標を達成したらいいのか、どういうスキルをつけてほしいのかを示す指針であるのです。
人事評価を適切に作るステップとは
では、人事評価はどのように作っていけばいいのでしょうか。
またどのように見直しをしていけばいいのでしょうか。
プロセスを見ていきましょう。
従業員意識調査
人事制度作りには、現場の意見を聞くことが非常に大事です。
この調査を行うことで、会社の中に潜んでる人的経営課題を浮き彫りにすることができるからです。
等級制度を作成する
従業員意識調査をして出てきた課題で、人事制度に反映したほうがよいものもあるはずです。
それを制度に反映していきます。
等級制度は、人事部にとって「採用」「育成」「評価」すべてにかかわってくるものです。
この等級制度は、会社が求めている人材戻るになります。
「採用」においては、求職者を評価するモデルとなり、「育成」であれば、社員の目指す目標となり、「評価」においては、この等級に達成しているかという比較する視点となります。
人事評価シートを作成する
「何を評価するのか」「どう評価するか」を記載したシートを作ります。
それをもとに評価を行います。
ここでのポイントは、自ら考え自発的に行動する「自責思考型社員」を生み出すことができるかどうかです。
社員がどのように考え、どう動き出すかを想像して作ることが重要です。
想像して作るには現場を知るために、「従業員意識調査」による現状把握が必要になります。
評価の対象の設定
人事評価シートを作るうえで、重要なのは、評価基準対象の設定です。
一般的にはこの3つです。
業績考課
社員が実際にどのような業績(成果)あげたかを評価します。
売り上げなど数字などはっきり表れるものは、比較的容易に判定が可能ですが、人材育成など数値では表現できないものは判定が難しいです。
社員は数値で測れない苦労、努力が必ずあります。
目に見えない苦労をいかに評価するかがキーになります。
- 仕事の質
- 仕事の量
- 業務改善
- 指導育成監督
- 目標達成
能力考課
一定の期間内に社員がまだ身に着けていない能力を見つけることができたかどうかを図ります。
このポイントは、等級基準と整合性が取れているかです。
- 知識
- 技能
- 判断力
- 決断力
- 折衝力
情意考課
業績や能力で測ることが難しいやる気や責任感などを図る項目です。
若年者や勤務年数の浅い者に適用される傾向があります。
また評価者の主観が入り込みやすいものになります。
よって、評価者は日ごろの行動から判定するようにしておきましょう。
- 規律性
- 協調性
- 積極性
- 責任性
- 企業意識
何段階で評価を判定するか決める
次に何段階で決めるかを考えます。
一般的に、5段階や4段階でされている企業が非常に多いです。
5段階評価
非常に一般的な評価です。
目標に100%達成であれば「3」と考えます。
よって、「中心化傾向」を誘発する傾向にはあります。
4段階評価
5段階評価の「中心化傾向」を防ぐために導入されることが多いです。
中心となる評価が存在しないため、平均的な働きをしてくれる社員が評価しずらいというデメリットがあります。
中小企業において、このような社員で長期間勤務してくれる社員は重要であるため、導入の際は注意してください。
3段階評価
被評価者のレベルが高くないうちは導入しやすいものです。
しかし「中心化傾向」がより顕著になります。
2段階評価
良い・悪いしかないため、評価が極端になる傾向になります。
社員が納得する人事評価をするためのポイント
人事評価は等級制度や賃金制度に反映されるため、評価される側にとっては、公平性を求められます。
評価を行うにあたり以下に留意しましょう。
- 被評価者と評価者を確定させる
- 評価期間の設定を行う
被評価者と評価者を確定させる
社員側の納得のいく評価をするために、誰が、誰を評価するか、またその評価ステップもきちんと説明できるように決めておきましょう。
不明確な評価体制だと、社員側も、評価体制に疑問を感じ、評価さえも納得しないと思います。
人事評価をする側は必ず複数人にしてください。
人数が少ない企業であれば、1次評価者を直属の上司、2次評価者は社長でも構いません。
評価側は、できるだけ、常に日常の業務を見ている方にしましょう。
- 被評価者が所属する部署の管理職の人
- 被評価者からのごますりに動じない人被評価者から信頼されている人
評価期間の設定
評価期間とは、人事評価対象になる期間をいいます。
どの期間がその対象かは明確にするべきです。
例えば、前回、成績を上げられずに、今期頑張ったとしても、上司が前回の勤務態度まで踏まえて評価してしまうと、今期改善しても、減点されるからです。
過去の態度は重視せず、決められた期間で評価するためにも期間は決めるべきです。
主な評価期間のメリットデメリットをご紹介します。
それぞれのメリットデメリットを考慮して、自社の方向性沿った評価期間を採用するようにしましょう。
1~3か月
成果主義の企業に向いており、短期間で評価、成果と報酬により連動しやすくなります。
しかし、即成果につながる目標を優先しがちになり、経営理念、経営計画といった長期的な視点を見失いがちになってしまいます。
6か月
一般的には上期、下期といいますが、「4~9月」「10月~3月」に設定されている会社が非常に多いです。
これは、会計期間や人事異動の時期と連動するためという理由があげられます。
6か月を取り入れている企業は多く、年度の中間で一度、評価するため次の半期目標立てやすいです。
しかし、長期的に取り組む目標よりも半期という単位で結果が出やすい目標に取り組みがちになってしまいます。
12か月
会計期間と連動しやすいとところがあげられます。
しかし、評価期間が非常に長いため、努力と報酬の連動性がうすれる傾向にあります。
また、期首で決めた目標も途中で状況が変化し、見直しの期間もないため、取り組む必要がない場合も出てきます。
人事評価をする上での陥りがちな点とは
人事評価をする上で、評価側陥りやすいといわれるものが、10点あります。
その点に気を付けて評価するようにしましょう。
- ハロー考課
「坊主憎けりゃけさまで憎い」と、一つ良ければ、すべて良いと判断しまいがちです。 - 寛大化傾向
部下に嫌われたくないため、評価が甘くなりがちです。 - 厳格化傾向
寛大化傾向とは逆に、評価が実際よりも厳しくなる傾向です。 - 中心化傾向
評価が中央あたりに集まり、優劣が付きにくい傾向があります。 - 極端化傾向
中心化傾向とは逆に、差をつけようと評価結果をバラけさせてしまう傾向のことです。 - 対比誤差
評価者の得意分野では甘くなる傾向のことです。 - 逆算的傾向
総合結果から逆算して評価を実施してしまうことです。 - 知識偏重
知識が豊富だとほかの能力もあると判断して評価することです。 - 期末効果
評価期間が決められているにも関わらず、評価判定時期に近い事実に左右されて評価してしまうことです。 - 相対比較
職場内の他の社員との比較で業績や能力を評価してしまうことです。
人事評価制度の運用のキーはこれだ!
人事評価制度の運用をよりよくするためには、評価者側の評価スキルが重要になってきます。
今まで評価したことのない評価者にとってみると非常に難しいスキルになります。
そのために人事部がするべきことは、評価者側へ評価者研修です。
評価者には、日ごろからの被評価者の営業成績はもちろん、行動なども記録をとるなど収集を促します。
次に重要なのは、評価者会議です。
人事部は評価者に任せっぱなしでは成果・効果が出てこないため、月1度、社長・幹部・評価者を集めて、開催していきます。
営業会議を行う企業は、どこもありますが、このような会議をしない企業も非常に多いと思います。
次のような内容を行うことをオススメします。
- 評価者による発表
- 参加者による議論
- 修正計画の策定
- 人事部による助言・支援
これにより、人事部は、育成についての問題点や、進捗管理を毎月できることになります。
会社が現場の実態を認知することが可能になります。
人事部は、人材管理をするだけでなく、社内のコミュニケーションを活性化するのが目的です。
この評価者会議を繰り返し実施することで、人事データが蓄積でき、人事分析にできるようになるため、人材育成や採用活動等について議論できるようになります。
人事評価の多様化
人事評価の手法は、多様になってきています。いくつかみていきましょう。
360度評価
名前の通り、被評価者を360度の方向から評価することを言います。
近年、新卒採用でも使われている手法です。
これまでの、決められた直属の上司からの評価だけではなく、同僚・部下など様々な方面からヒアリングをします。
この評価は、公平性をきすためのものではありますが、普段評価についてトレーニング受けてない評価者からも評価されるため、人事評価として利用できない場合もあります。
コンピテンシー評価制度
高い業績を上げている社員に共通する特性をコンピテンシーといいます。
コンピテンシー評価は、この業績のいい社員の行動特性を設定しそれに基づいて評価する手法です。
どのように行動をとれば、営業成績につながるかなどもわかります。
例えば、一日どのくらい営業の電話に費やしているか、どういう行動をとれば成約率につながっているかなどを分析します。
コンピテンシーを活用する場合は、自社でデータをとり、何度も分析したうえで、独自のコンピテンシーモデルをつくる必要が出てきます。
目標管理制度
個人もしくはチームで目標設定し、その達成度で評価するシステムです。
自分の意思が入った目標設定になるため、自主的な行動を促します。
ただし、目標設定は明確でないと、評価できないため注意が必要です。
これは、1954年にピータードラッカーが提唱した考え方で、今でも多くの企業がこの評価を利用しています。
人材の定着を維持するためには中間管理職による1on1面談が必要不可欠であり、部下やチームメンバーの課題や悩みを引き出すために必ず実施する必要があります。ところが、管理職自身は1on1を受けたことがないために、どうしたら良いのかわからないという方は少なくありません。そんな悩みを抱えている管理職・職場リーダー向け人事テンプレート「1on1面談テンプレート」と「実践のための研修資料」を無料でダウンロードいただけます。
まとめ
人事評価は、社員の不満を解決するためにとても大事な指標です。
社員の不満の中でも多いのは、同僚との評価の差です。
納得する人事評価を現場の声を参考にして作ることができれば、その点は大いに解決できます。
中小企業にとって確保しにくい「人材」はとても大切な財産です。
人材が流出しないように、人事部を作ることで大抵の企業内の問題は解決できます。
何度も言いますが、人事部は制度設計が目的ではなく、社内のコミュニケーションを活性化するのが大きな役割です。
ぜひ、人事部が独立していない企業は人事部を作り、人事改革に取り組んでください。
企業にとって「ヒト」「モノ」「カネ」はとても重要です。