自社で作成した人事評価制度はなぜ失敗しやすいのか?

大橋高広

人事評価制度は、企業の事業や社風に沿って、作成できる反面、社員が納得できない人事評価になっていると、逆効果になってしまいます。

近年、人事管理ツールの発展に伴い、人事評価制度を自社で作成する中小企業が増えていますが、よくこんな質問をいただきます。

人事評価制度を自社で作成しましたが、社員から不満が多くなり、退職する社員が出る始末です。何が間違っていたのでしょうか?

確かにDXの発展により、人事評価制度は自社で作成しやすい環境になっています。

しかし、人事評価制度は総務部や管理部が中心になって作っても効果は発揮しません。

現場の社員の業務や特性を知る人物が中心にならなければ、現場に浸透しません。

「社員のモチベーションが上がらない…」

「人事評価がマンネリ化している…」

「自社に合った人事評価制度を構築したいけれど、何から始めたらいいのかわからない」

「既存の制度を見直したいが、うまくいくか不安だ」

こういったご相談をよくいただきます。

適切な人事評価制度は、社員の成長を促進し、企業の業績向上に大きく貢献します。
しかし、人事評価制度を自社で作成するには、多くの課題が伴います。

本記事では、「人事評価制度、自社で作成できる?」という疑問に答えつつ、人事評価制度作成における課題や"成果を出せる社員"を生み出す人事評価制度について、解説します。

人事評価制度は自由度が高いことが裏目に出やすい

大橋高広

人事評価制度は、企業の事業や社風に沿って、作成できる反面、社員が納得できない人事評価になっていると、逆効果になってしまいます。

人事評価制度は、社風や事業の特性に応じた人事評価を自由に設定でき、社員のやる気や給与査定の指標として活用できる優れた制度です。

また、労務と異なり、法令による制限やルールも存在しません。

そのため、中小企業も含めて、各企業が自由に作成でき、運用できます。

しかし、人事評価制度の設計や運用の"自由度"があるため、思わぬ弊害を生み出し、最悪の場合、優秀な社員から退職していき、必要とする人材の定着が下がってしまいます。

「自由度が高い」がために、人事評価を受ける現場の社員が不在のまま、作成される人事評価制度

自社で人事評価制度を作成する時の中心的な役割を担うのが、総務部や管理部です。

しかし、この配置こそが機能しない人事評価制度を生み出す原因でもあります。

"成果を出す社員"を生み出す
中小企業の人事評価制度設計は

総務部が作る人事評価制度がなぜ失敗するのか

大橋高広

総務部や士業が中心となる人事評価制度の設計がなぜ失敗しやすいのか?

それは、「現場の社員の気持ちがわからないから」に尽きます。

また、士業など国家資格を有する担当者が人事評価制度を担当することも増えています。

しかし、国家資格は素晴らしい資格であり、優秀な人材では変わりありませんが、あくまで保有資格のプロフェッショナル(法律や労務など)であり、"人事のプロ"ではありません。

つまり、現場の社員とのコミュニケーションに多大なる時間を使い、現場の社員の気持ちがわかる担当者でないと、現場が納得する人事評価制度は作れません。

人事評価制度を作るためには、現場の社員とのコミュニケーションを重視する人事評価制度の設計専門の人事コンサルタントに依頼する、もしくは人事評価制度の設計責任者に現場の社員を任命する必要があります。

"成果を出す社員"を生み出す
中小企業の人事評価制度設計は

社員が納得する人事評価が実施されていますか?

大橋高広

人事評価制度は、社員が納得できる制度になっていて、はじめて機能します。

人事評価制度は、単なる給与決定のツールではありません。

社員のモチベーションを高め、成長を促し、ひいては企業全体の業績向上につながる重要な制度です。

効果的な人事評価制度は、社員の潜在能力を引き出し、組織全体の活性化に貢献させなければいけません。

多くの中小企業が以下の点を重視しないまま、人事評価制度を作成していることがほとんどです。

会社・上司・部下との間で合意、支援体制が構築できているか

明確で具体的な目標設定は、社員のやる気を最大化するための第一歩です。

曖昧な目標では、社員は努力の方向性を定められず、モチベーションの低下に繋がります。

効果的な目標設定には、以下のポイントが重要です。

ポイント具体的な方法
会社目標との整合性社員の目標が、部署目標、そして会社全体の目標と整合しているかを確認する
→ 会社全体の成功にどのように貢献するのかを明確にすることで、社員の責任感とやる気を高められる
上司と部下との間ので合意形成上司と部下がどういった行動と成果を出すことで、人事評価に反映するか、合意が取れていなければならない
目標達成のための支援体制「最近、どう?」と聞く1on1ミーティングを実施する管理職は失格です。
社員の目標達成のために、社員の能力や意欲を最大限に引き出す具体的な支援を約束しているか、管理職のスキルにかかっています。

曖昧さを排除し、納得感のある評価を実現する管理職の存在

評価基準が曖昧だと、評価結果に納得できない社員が必ず現れます。

この原因は明確で、評価者である管理職の人事評価スキル不足に起因します。

人事評価制度は、管理職が部下を評価するための指標であり、管理職の評価能力を補完する内容でなければなりません。

それは、目標設定や評価の基準を、人事評価制度に照らし合わせて、事前に上司と部下の間で合意形成を取っておくことが大切です。

公平で透明性の高い評価制度を構築するためには、管理職や現場の社員の意見を吸い上げ、評価基準を明確に定義することが大切です。

また、人事評価制度の雛形が作成された時点で、経営者、管理職、見本となる優秀な社員に意見を求め、理解を得る必要があります。

定期的な見直しを行い、常に最新の状況を反映させることも大切です。

1on1ミーティングの有効活用:部下の成長を促進するコミュニケーション

評価結果を伝えるだけでなく、具体的なフィードバックをおこなわなければ、社員の成長を促進できません。

効果的なフィードバックの機会こそ1on1ミーティングですが、正しい運用方法を心得ている管理職は多くありません。

効果的な1on1ミーティングフィードバックの方法
具体的な行動に基づいたフィードバック抽象的な表現ではなく、具体的な行動や成果を例に挙げてフィードバックを行う
肯定的な側面と改善点をバランス良く伝える良い点と改善点を両方伝え、モチベーションを維持しながら成長を促す
双方向のコミュニケーション一方的に伝えるのではなく、社員の意見や考えを聞き、共に解決策を探る
定期的な1on1ミーティングの実施評価時期だけでなく、定期的に1on1ミーティングをおこない、社員の成長を継続的にサポートする

「最近、どう?」という言葉から始める管理職は失格

1on1ミーティングが機能しているかどうかは、部下である社員にヒアリングをおこなうことが有効です。
「最近、どう?」という言葉を使う管理職は、部下の行動を見てもいなければ、記録もしていません。

早急に管理職研修を実施し、正しい評価能力を身につけさせなければなりません。

1on1ミーティングは、社員の成長を促すだけでなく、上司と部下の信頼関係を構築する上でも重要な役割を果たします。

継続的かつ定期的に1on1ミーティングを開催することで、社員のやる気を高め、企業全体の成長につなげなければなりません。

人事評価制度は、社員の成長と企業の成功を両立させるための重要な制度であると同時に、管理職の育成にも活用できます。

"成果を出す社員"を生み出す
中小企業の人事評価制度設計は

失敗しやすい人事評価制度の特徴

大橋高広

人事評価制度を機能させるためには、「現場の社員が中心」、「管理職が活用できる評価軸」、「運用しやすさ」の3つの点が大切です。

人事評価制度は、適切に設計・運用されなければ、かえって組織に悪影響を及ぼす可能性があります。

自社で人事評価制度を作成する際には、以下の3つの落とし穴に注意しましょう。

現場の社員が不在の人事評価制度

多くの企業が人事評価制度導入に失敗する原因のひとつに、現場の社員が不在のまま、設計されることです。

総務部や士業が中心になって作っても、現場の実情や現場社員にしかわからない気持ちを理解できないまま、人事評価制度を作っても誰も実行しません。

現場の社員が不在のまま、人事評価制度を作っても、制度が形式的に実施されるだけで、形骸化するだけで意味がありません。

管理職やチームメンバーが単なる書類作成作業となり、評価結果が人事考課や昇進・昇給に反映されない、結果的に、人事評価のプロセスが不透明のため、社員は制度への不信感を抱き、やる気を失ってしまいます。

管理職が活用できない評価軸

人事評価制度の公平性を欠くことは、社員のやる気の低下や離職につながります。

これは、人事評価制度に記載されている評価基準を、管理職が活用できていないことに起因します。

管理職が活用できない評価軸は、評価者自身のバイアスや主観的な判断が入り込みやすい原因となります。

管理職が活用できる人事評価制度とは、上司と部下が人事評価において、同意形成を取るにあたり、どの評価基準を中心にするか、相談しながら決定できる評価軸が設けられなければなりません。

まさに、この評価軸こそが"現場の社員"にしかわからない納得感のいる評価軸となります。

現場の社員が人事評価制度の設計に関与できない場合、徹底的にヒアリングを実施するか、現場社員との面談が可能な人事評価制度の設計ができる人事コンサルタントに依頼しましょう。

"成果を出す社員"を生み出す
中小企業の人事評価制度設計は

管理職に負担を強いる人事評価制度

複雑で煩雑な人事評価制度は、ただでさえ忙しい管理職の負担を増やし、優秀な管理職ほど退職していきます。

人材育成のスキルがない管理職の比率が多くなれば、評価の質が低下し、部下の納得がいかない評価結果のフィードバックになってしまいます。

これは、管理職だけでなく、優秀な人材ほど退職していくという負の連鎖につながります。

人事評価制度は、評価者である管理職が活用しやすい制度であってこそ、運用できます。

管理職にヒアリングを重ね、シンプルで効率的な仕組みを作らなければなりません。

"成果を出す社員"を生み出す
中小企業の人事評価制度設計は

大橋高広の人事評価制度設計について

大橋高広の人事コンサルティングは、中小企業を対象とした管理職育成人事評価制度の立案に強みを持ちます。

「人事を蔑ろにする企業は必ず衰退する」

多くの会社の問題は人事にまつわるものが多いといえます。

大橋高広の人事コンサルティングは「人事評価制度の見直し」と「管理職育成」に特化したソリューションを強みとしています。

採用や人事育成・定着に課題をお持ちの中小企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。

"成果を出す社員"を生み出す
中小企業の人事評価制度設計は

幹部人材の育成・採用でお困りの方はお気軽にお問い合わせください

中小企業の経営を安定させるには、戦略と実務能力を兼ね備えたナンバー2の存在が欠かせません。

大橋高広は人事コンサルティング業務を通して、数多くの中小企業の経営者や現場スタッフとの面談を繰り返してわかってきた、幹部人材の育成や採用を成功させるメソッドを提供しています。

「会社の経営を安定させたい」「現場スタッフが生き生きと働ける職場環境を作りたい」「ナンバー2をはじめとした幹部社員を育てたい」とお考えの経営者はぜひお気軽にお問い合わせください。

    人事で損する『企業』と『人』をなくしたい

    会社にとって、莫大な利益流出につながる『採用費』。実は職場が良くなれば、採用には困りません。職場の良さを発信するだけで人は集まります。リファーラル採用(口コミ)もできます。さらにスタッフも定着します。だからこそ、いつまでも利益を採用費に垂れ流すのではなく、人事に取り組んで、良い会社をつくって欲しい。そう考えています。

    スタッフにとって、キャリアアップは重要な課題です。そのために、さらに『実務スキル』をきわめていこうとする方が多いです。しかし、一定レベルまで昇格すると頭打ちします。それは、部下を育てたり、チームの成果を上げるという『マネジメントスキル』が不足しているからです。皆様にはぜひマネジメントスキルを身につけていただき、さらに活躍の幅が広げて欲しい。そう願っています。

    この機会に、ぜひ人事テンプレート12選をダウンロードしてください。そのことが、皆様にとって『人事』や『マネジメント』について考えるキッカケとなりましたら嬉しいです。