一方で、Z世代の指導方法や関わり方に頭を悩ます経営者や管理職も少なくありません。
また、「Z世代はやる気がないのではないか…?」と新入社員に対して、疑問を覚える方からもご相談があります。
本コラムでは、直近のZ世代の特徴やZ世代が社会人になる前の背景などにも触れながら、経営者や管理職が取るべき、Z世代への育成方法をご紹介します。
Z世代の背景をしっかりと把握する
Z世代といえど、その年代は幅広く、Z世代を一括りして対応していては判断を見誤ってしまいます。
1990年代半ば~2010年代序盤に生まれた世代で、2024年現在では現在13歳~29歳前後が対象となります。
【参考】Z世代│野村総合研究所(NRI)
Z世代の中でも既に30代突入間近であり、立派な管理職に就いて、業績を上げている方もいらっしゃいます。
しかし、管理職候補、現場の管理職についていてもおかしくない29歳と新入社員の22歳では、同じZ世代と言っても価値観も入社時期の時代背景も全く異なります。
経営者や管理職は「Z世代の新入社員」と一括りで把握するのではなく、その年に入社してきたZ世代の時代背景をしっかりと把握しなければなりません。
2024年4月入社のZ世代の特徴
2024年4月入社のZ世代の特徴は、まさにコロナ世代ということです。
本来であれば、大学生活において、「毎日通学し、同世代と椅子を並べて、大教室で講義を受ける」「対面での人間関係の構築やコミュニケーション力を培う」という貴重な時期を享受できなかった世代です。
つまり、学生時代にオンラインでしか交流や勉強をしてこなかった世代であり、厳しい言葉で言えば、「リアルの大切さを知らない世代」といえます。
SNSやインフルエンサーの影響を強く受けている世代でもあります。
そして、もうひとつ2024年入社の新入社員の重要な特徴は、オンライン生活を強いられてきた影響もあり、他のZ世代と比べてもSNSやインフルエンサーの影響を強く受けている世代と考えられます。
生成AIの登場やスマートフォンで情報発信が完結する時代において、SNSの情報やインフルエンサーから以下の価値観を植え付けられている可能性があります。
- 「働きまくるのは仕事ができない証拠」
- 「楽して稼ぐ方法はいくらでもある」
- 「嫌だったら退職代行を使えば良い」
近年では、こうした価値観を流布している傾向が強くなっており、こうした価値観を間に受けている世代であると認識しなければなりません。
昭和時代や平成時代の新卒社員とは異なり、今の新卒社員は「真っ白なキャンパス」ではないことを改めて認識しましょう。
一方で、新卒社員の中には、副業やスキルアップに熱量を持っている人材も含まれています。
こうした人材を見抜けるかどうかも、その後、会社に残ってくれるかどうかの鍵となります。
Z世代の価値観変化について
2023年のSNS型投資詐欺案件が急増している背景もこうした「楽して稼ぎたい」と考える人が増えている、第三者との接触がSNSやメッセンジャーツールでやりやすくなっている理由のひとつです。
経営者が管理職に約束するべき、たったひとつのこと
毎年4月〜5月に報道されることが新卒社員の「早期退職」です。
4月の新人研修中、研修終了後の配属初日で退職を申し出る新卒社員は、もはやめずらしくなくなっています。
言うまでもなく、新卒社員の早期退職はミスマッチによるものですが、採用を決定した人事部や経営者であっても見抜くことが難しいといえます。
そのため、新卒社員が早期退職をしてしまった全ての責任を、人事部や経営者ほど採用活動に関わっていない管理職に課すことは酷でしかありません。
経営者が管理職に対する、たったひとつの約束
管理職(上司)が会社方針に基づき、きちんと育成しているというエビデンスがあれば、上司の指導によってZ世代が辞めても問題ないというという確約をすること
現在の管理職は、Z世代の退職による人事評価のダウンや叱責を恐れています。
新人育成に関する、ルールなき責任の追求は、管理職の疲弊を招き、最も退職してほしくない中間管理職の人材流出につながりかねません。
上司(管理職)からも経営者に対して、しっかり指導してZ世代が辞めても問題がないか確認することも大切です。
経営者は「Z世代が辞めたら管理職の人事評価が下がる環境では、育成指導できない」と管理職に思わせてはなりません。
Z世代の効果的な育成方法について
直近の新卒入社のZ世代の時代背景を把握した上で、適切な人材育成をおこなわなければなりません。
しかし、既にお伝えしている通り、昭和や平成の時代における画一的な人材育成は効果がありません。
本コラムでは、大橋高広が現場で新卒社員研修や管理職研修を通じて得た、Z世代の効果的な育成方法を3ステップでご紹介します。
【ステップ1】1on1ミーティングで3つのタイプを把握する
配属されてきたZ世代の新卒社員に対して、1on1ミーティングを実施します。
その上で、育成対象者であるZ世代を以下の特徴があるかを確認しましょう。
- ワーク派:若いうちに仕事を頑張りたい、成果に見合った報酬を得たい人
- ワークライフ派:仕事と生活の調和を意味する「ワーク・ライフ・バランス」を重視する人
- ライフ派・ノーワーク派:自分の人生や生活が第一であり、仕事に対するモチベーションが低い人
ダイバーシティ時代では、人材の仕事や人生に対する考え方を尊重して、それぞれ指導することが大切です。
【ステップ2】3つのタイプのZ世代への接し方
1on1ミーティングで、Z世代新卒社員がどのタイプか見極めた上で、それぞれのタイプに仕事に対する接し方を知りましょう。
※スマートフォンは横スクロールできます→
Z世代新卒社員のタイプ | 接する内容について |
---|---|
ワーク派 | 「昭和の働き方をする必要はないが、そういう時代もあったこと」 「今でも成果を出している人は寝る間も惜しんで働いていること」を伝える |
ワークライフ派 | 無理に成長をさせようとしない 休み方改革ができるように、一緒に再現性の向上をしてあげる みんなで仕事ができるように「業務の再現性を高める」という職場改善をしていく |
ライフ派 ノーワーク派 | パワハラなどのコンプライアンス問題に巻き込まれてしまう可能性があるため、会社(社長や人事部)と相談しながら進めていく |
同じZ世代の中でも「若いうちはどんどん働きたい」と考える働きたいZ世代と働きたくないZ世代がおり、今ではマインドも格差社会となっています。
そのため、社長や管理職(上司)は、Z世代の考え方に飲み込まれて、昭和の考え方を完全に捨てる必要はありません。
「働きたくないけど稼ぎたい」という若い人の価値観を受け入れていては、会社がつぶれてしまういます。
経営者も管理職も昭和の考え方で成功してきたということは間違いありません。また、Z世代で活躍しているベンチャー企業の若手経営者は寝る間も惜しんで働いています。
Z世代新卒社員の中でもワーク派をピックアップし、上記の価値観に納得した人材を大切に育てて定着させていくことが大切です。
また、ワークライフバランスを重視するワークライフ派を「やる気がない」という判断してはいけません。
ワークライフ派はハイパフォーマーがやりたくない事務作業などをやってくれる貴重な人材でもあります。
業務の再現性を高めていき、誰もができる仕事内容として仕組み化し、長く働いてくれるように管理職だけでなく、職場のメンバー全員で職場改善していくことが大切です。
ライフ派・ノーワーク派は会社方針に則った正しい指導でもパワハラなどのコンプライアンス問題を引き起こす可能性が高いといえます。
1on1ミーティングでライフ派・ノーワーク派と判断できた場合、社長や人事部と連携しながら、慎重に進めましょう。
【ステップ3】ワーク派とライフワーク派それぞれに指導をおこなう
Z世代新卒社員のワーク派とライフワーク派の指導方法は全く異なります。
ワーク派の指導方法
ワーク派には、「成功するということはハードワークをするということ」を伝えましょう。
ワークライフバランスはもちろん良い価値観であることは間違いありませんが、スキルも年収も上がらないことをきちんと伝えなければなりません。
- 高度な教育を実施する(高い専門性、高いポータビリティ)
- 目指したいと思える上司、競い合えるライバルを用意する
- 成果を反映した人事評価を導入する(成果に応じた給与)
- エンゲージメント向上施策を実施する(放っておくと転職する)
極端な言い方になりますが、寝ずに頑張れるのは若い時だけであり、取りたい資格などがあるなら、若い時に取得することがよいと伝えて応援することが大切です。
労働基準法の域を超える働き方を強いることは法令違反です
上記の内容は長時間労働を推奨するものでは決してありません。法令内できちんと労働環境を提供できるかは会社の責務です。
ワークライフ派の指導方法
大きなスキルアップや年収アップなどを目指さない気質があるワークライフ派には、真面目にコツコツ働いてくれることは大変ありがたいことを伝えましょう。
仕事とプライベートを両立するという価値観は、今の時代、素晴らしい考え方なので、協力すると伝えることが大切です。
ワークライフ派には、無理に成長させようとしないことを認識しましょう。
- 働きやすさを実現する(休日休暇・福利厚生・テレワーク・服装など)
- 丁寧な上司、価値観の合う仲間を用意する
- わかりやすい教育を実施する(誰でもわかる、今すぐ使える)
- 納得感のある人事評価を導入する(ゆるやかな給与アップ)
- ネガティブフィードバックを実施する(ただし、言い方には注意が必要)
- エンゲージメント向上施策を実施する(放っておくと不満を言い出す)
ワークライフ派を定着させるためには、労働環境の整備が必須です。
属人化しやすい業務を削減し、何かあったときに周囲の社員が協力して業務を補助できる体制(休み方改革)を作らなければなりません。
休み方改革は多忙を極める管理職にも必要な取り組みです。管理職の定着は企業の将来を左右する重要な経営課題です。管理職を巻き込んで、働きやすい環境を構築することが大切です。
ライフ派、ノーワーク派について
ライフ派、ノーワーク派の中には、「指示待ち社員」どころか、「指示してもやらない社員」が増えています。
やる気のないZ世代の育成は困難を極めるため、コンプライアンス問題が発生する可能性を極力減らしていくことが大切です。
ライフ派、ノーワーク派の接し方
管理職だけでは解決できないため、経営者、人事部、管理職の3者連携をし、時には専門家に相談することも大切です。
毎年4月は新社会人が初出社し、社会人として活躍するために新人研修を受ける時期でもあります。