それが「集客」「資金」そして「人材育成」です。
この人材育成の中でも、管理職育成の他、会社を成長させる上で最も大事な人材で、「社長の右腕」「会社のナンバー2(No.2)」です。
本コラムでは、中小企業に欠かせない「ナンバー2」の役割や見つけ方、採用する際の注意点を中心に解説します。
なぜ中小企業で幹部社員が育たないのか
本章では、大橋高広が数多くの中小企業の人事コンサルティングを手掛けてことにより、見えてきた「中小企業で幹部社員が育たない」の要因をご紹介します。
人材確保や育成に予算をつけてこなかった
経済産業省が発表している企業経営上の課題で大きな割合を占めているのが、「人材の確保・育成」です。
中小企業の多くが人材確保に経営課題を感じており、とりわけ管理職をはじめとした幹部社員の獲得・定着が難しい傾向があります。
また、多くの中小企業では、幹部社員の育成を特段行っておらず、年間でかける経営人材のための年間育成費用や日数についても目安を定めていないことが現状です。
こうした企業が幹部社員や管理職への育成に予算をつけてこなかったことも、社内で幹部社員が育たない原因のひとつといえます。
さらに、多くの中小企業がプレイングマネージャーであり、業種に限らず、現場でのプロフェッショナル(職人や専門家)が多いため、マネジメント能力を身につける機会が少なく、後継である若年人材が育たない原因にもなっています。
安心して家族に継承できる状態ではない
第一次ベビーブームで生まれた団塊世代が75歳以上となり、日本が超高齢化社会に突入する2025年問題のひとつに、中小企業の経営者の高齢化が挙げられます。
しかし、多くの中小企業では、事業承継が進んでおらず、中でも親族への事業承継が進んでいません。
自分の子どもが自分の会社を承継してくれることは、中小企業の経営者にとって、これほど嬉しいことはありません。
では、なぜ多くが親族内事業承継が進んでいないのか?
それは「事業承継する会社が安定していないこと」が挙げられます。
ここでお伝えする「会社が安定していない」という意味は、何も資金繰りが苦しいという点だけではありません。
職場の雰囲気や事業承継が進まない現場は、将来的に会社を不安定にしてしまう可能性が高く、「若い経営者や親族経営者が経営を受け継いでも現場が言う通りに動いてくれない」という不安の原因にもなっています。
こうした課題を解決する上でも、会社を安定させる、実務に長けたマネジメント(経営)ができるナンバー2の存在が重要となります。
つまり、親族は「ナンバー2がしっかりしない事業承継ができない」という考えている可能性が高いといえます。
参考:【中小企業経営の弱点】後継者・幹部候補の見つけ方・育て方!今すぐ着手できる方法(大橋高広寄稿)│経営ノウハウの泉
中小企業のナンバー2の役割
中小企業のナンバー2には、管理職とは異なる役割が期待されます。
経営を安定させるためにも中小企業のナンバー2に求める役割を明確にしておく必要があります。
戦略と実務の両翼を担える
ナンバー2の大きな役割として、会社の現状や現場を踏まえた上で、中長期的な戦略を立てられ、それを実行できるだけの実務能力が求められます。
会社としての理想の戦略を描くことは、社長の仕事です。
ナンバー2は、社長が描いた戦略をもとに現場社員とコミュニケーションが取り、現実的な数値と根拠を示しながら、戦略を最適化した上で実行する能力が求められます。
会社の戦略は、企業によって、十人十色です。そのため、外部からナンバー2を採用する場合、前職の経験だけで戦略を打ち出そうとする人材には注意しましょう。
外部採用におけるナンバー2人材候補には、素晴らしい経歴や実績がある方が多いといえます。一方で、その実績の中身はご本人によるものなのか、会社の看板や組織のサポートによるものなのかを見極める必要があります。
パートナーや融資元を見つけてくれる
中小企業の経営者は、会社の資金繰りを解決する役割を担っています。
そうした中で、最適な融資元や競合が可能なパートナーを見つけてくれるナンバー2を求めています。
外部から幹部社員候補(ナンバー2)を採用する場合、人的ネットワーク(人脈)をいかに構築できているかが大切となります。
社長と現場社員の架け橋になる
ナンバー2は中小企業に人材にはないマネジメント能力が求められます。
中でも社長の想いと現場社員の気持ちがわかる、ナンバー2こそが中小企業の経営を安定させる鍵といえます。
現場社員の現状や”ホンネ”を理解して、会社をまわせる人材が求められます。
中小企業のナンバー2の見つけ方
中小企業のナンバー2を見つける方法は、社内で幹部社員候補生を育成するか、外部採用をするかの2つとなります。
幹部社員候補性の育成
幹部社員候補性の育成は、社長との営業同行(取引先・経済団体など)、ジョブローテション(計画的な配置換え)、経営会議のファシリテート(会議の進行役)といったOJTの実施が必要です。
その他、会社の情報を開示する(財務を含む)、社長による勉強会の実施(1on1がおすすめ、外部の勉強会に参加(会社の常識以外のインプット)のoffJT(Off The Job Training)さらには、一事業をまるごと運営させる、社長の権限(とくに人事権)を少しずつ委譲する、会社の経営計画の策定を任せるなどの権限委譲が必要です。
- 社長と行動を共にするOJT
- 会社経営に必要な情報のインプット(offJT)
- 権限委譲(特に人事権)
幹部社員候補には、「幹部候補者に自覚を持たせる」ことが大切です。また、中小企業の経営者は「事業承継の課題を早めに解決する」意識を持ちましょう。幹部候補生はすぐには育ちません。そのため、中小企業の経営者には、計画性を持って、幹部社員を育成していく覚悟を持つことが求められます。
外部採用によるナンバー2の発掘
中小企業の経営者の多くが、外部採用によるナンバー2を発掘する方法を取っています。
特に大企業出身の幹部候補生は人脈が広く、中小企業の経営者に魅力的な人材が多いといえます。
そうした優秀な外部人材を採用する際には、以下のポイントを押さえて採用するようにしましょう。
- 戦略とパートナー、資金を会社に提供してくれる
- 現場を動かせる人、現場の思考やスキルセットをわかっている
ナンバー2は、現場のスタッフやスキルセット、思考・考え方(行動)、業務内容がわからなければなりません。若手人材を含めて、現場とコミュニケーションが取れることが必須となります。
中小企業でナンバー2を採用する際の注意点
外部採用で中小企業のナンバー2を採用する場合、以下の点に気をつけましょう。
実務経験が足りていない人には注意しましょう
中小企業の経営者や社員、職人は現場の実務経験を通じて、付加価値を出しています。
また、管理職の多くも現場作業(実務経験)が評価されて、昇進・昇給していることが多いといえます。
そのため、現場の業務やサービス内容に精通していない、もしくは理解しようとしない方をナンバー2になった場合、会社がうまく回らず、生産性や売上が落ちるリスクが高まります。
たとえ、前職とは異なる業務であっても、前職で自ら手を動かし、現場を動かした実務経験がある、実績に裏付けられた知性と行動が取れる方が望ましいといえます。
現場の気持ちがわからない人を採用しない
ナンバー2は、現場のスタッフやスキルセット、思考・考え方(行動)、業務内容がわかっていないと適切なマネジメントを実施することができません。
そのため、管理職以上に現場スタッフの声に耳を傾ける、つまり、「"聞く"力」が必要となります。
今までの経験則に頼り、「経営とはこういうものだ」「現場はこうあるべきだ」という、方法論や「べき論」を語りやすい評論家タイプの方(知識だけで語りかけてくる人)は、自分の感性に従って、自分の思う的外れなことをやり出す可能性があるため、素直な人を採用するように心がけましょう。
大企業やIT企業出身の幹部社員候補は、大卒の人材が占めており、中小企業の従業員と接した経験がない方が多いといえます。そのため、採用の際、従業員の特性や経歴、どんな人材がいるのか、採用面談の際にしっかりと伝えておくことが大切です。
まとめ
現在、中小企業の多くが不安定な国内、国際情勢に左右され、不確実性の高い環境にいると考えられています。
労働関連の法改正が進み、中小企業の負担も大きくなっていくことが予想されます。そのため、中小企業は経営を安定化させることが大切となり、経営を支えることができるナンバー2の存在は大きいといえます。
ナンバー2は社内で幹部社員候補生を育成する方法と、外部採用する方法があります。経営戦略に応じて、最適な方法を採用し、自社の成長を助けるナンバー2を発掘しましょう。
現場主義や実務を通じて、会社を大きくしてきた中小企業経営者にとって、会社を成長させるポイントが3つあります。