企業の未来を担う若手社員の成長には、管理職のあり方が密接に関係しており、管理職研修を怠ると、さまざまなリスクが発生します。
良好な経営活動をおこなうためには、管理職研修が重要であることや管理職に必要なスキルについて紹介します。
中小企業の管理職研修の現状
ほとんどの中小企業では、「社員研修=若手社員の教育」と考えており、若手社員の教育に力を注ぎ、管理職の教育には力を入れていないことが現状となっています。
そのため、どんなに業務遂行能力や個人業績が優れていても、管理職に必要な「若手社員を育てる力」をもっていない管理職も多く、組織としての管理職の役割が発揮されず、企業全体としての成長にも影響を及ぼしています。
管理職にみられる2つのパターン
日本の企業では、管理職となって経緯について、「年功序列制度による昇格」または「個人業績による昇格」の、2つのパターンでの二極化が進んでいます。
年功序列制度による昇格
年功序列制度によって管理職となった場合、総合的なスキルが優れている人もいますが、明確な業績・目標の達成、不達成にかかわらず、業務遂行能力のみ、あるいは継続勤務年数のみで昇格した人も多くいます。
そのため、「どうしてこのような結果・成果にたどり着いたのか」というプロセスや行動内容を明確に意識できる能力に乏しく、人事考課などの際、管理職として適切に部下を評価できないなど、管理職としての役割を果たせないこともあります。
個人業績による昇格
個人業績によって管理職となった場合、個人としてのスキルは優れていても、ひとりでこなせてしまうため、他者を巻き込んで業務を遂行する協調性や、コミュニケーションに欠けてしまう人も多くいます。
管理職に重要なスキルのひとつである「コミュニケーション能力」が欠けていると、いくら個人の業績は優れていても、管理職の役割が果たされず、企業全体としての成長につながりません。
管理職には、「プロセスや業務内容を評価するための優れたコミュニケーション能力」が必要であるため、上記のパターンに当てはまる現代の管理職には、管理職研修が必要となります。
管理職研修を怠ると良好な経営が厳しくなる理由
管理職研修は、企業全体の成長に影響するため、管理職研修を怠ると、さまざまなリスクを背負い、良好な経営状態の維持が厳しくなってしまいます。
若手社員の成長に影響する
若手社員は、企業の未来を担っているため、若手社員の成長・活躍に期待がかかりますが、若手社員の成長には、管理職のあり方および管理職のスキルに大きく影響します。
管理職に若手社員(部下)を育てるスキルがないと、組織として機能しないため、利益も伸びず、企業は成長するどころか衰退していきます。
また、若手社員のモチベーションは、上司(管理職)のあり方と密接に関係しており、管理職が「いつも忙しそう」な状態や、「いつも態度が悪い」状態の場合、部下からみた上司の姿は、「こうなりたくない」「尊敬できない」姿として印象を受けてしまうため、若手社員のモチベーションを下げ、若者の“出世離れ”を招いてしまいます。
社員の定着率に影響する
企業にとって人材は必要不可欠であり、採用活動には、それなりの時間と労力が必要となるため、社員の離職は極力避けたいものです。
しかし、管理職が自身の役割を把握せず、満足できないような人事考課を実施するなど、組織の雰囲気が悪化すると、社員の不満が募り、離職率の増加につながってしまいます。
管理職に必要なスキル
必要な人材を確保し、長期にわたって良好な経営活動をおこなっていくためには、管理職のあり方が重要です。
管理職に必要なスキルとは、具体的にどのようなスキルであるのか、解説します。
リーダーシップではなくフォロワーシップ
管理職に必要なスキルとして、よく「リーダーシップ」があげられますが、経営幹部や企業の代表者以外には、「カリスマ性」や「リーダーシップ」は必要ありません。
リーダーシップはまったく不要というわけではありませんが、リーダーシップは時に、成功者としてのプライドが上回り、自分の考えや意識を変えない、頑固な管理職を生み出してしまいます。
これからの時代に必要とされる管理職スキルは、リーダーシップではなく「フォロワーシップ」です。
フォロワーシップとは、チームのメンバーが、それぞれがもつ力を最大限に発揮できるように、能動的かつ自律的に考え、支援・貢献することをいいます。
かつての強靭なリーダーシップではなく、管理職が、部下の支援・貢献に徹することで、結果的に組織全体の生産性を高め、成果を出すことができます。
ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル
現代の多くの管理職が、プレイングマネージャーであり、テクニカルスキル(業務遂行能力や業務知識)に優れていても、ヒューマンスキル(コミュニケーション力や交渉力などの対人関係能力)やコンセプチュアルスキル(本質をつかむ先見性や洞察力など)を十分にもった管理職は少ないことが現状です。
そのため、現代の管理職には、「聞き出す技術」や「共有する技術」が不足しており、社員のモチベーション低下や、離職率の増加を招いてしまっています。
「聞き出す技術」や「共有する技術」は、部下と良好な信頼関係を築くために必要不可欠であり、特に、「聞き出す技術」は、部下との面談の際に必要なスキルです。
しかし、「聞き出す技術」は、1on1ミーティングを実践すれば身に付くわけではありません。
そのため、部下との面談の際は、上司は黙って部下の話を聞き続ける「上司沈黙法」や、面談の時間を設定しない「面談時間無制限法」を取り入れて実施することで、「聞き出す技術」の向上が期待できます。
役割認識
役割認識とは、自らに期待される役割を理解することです。
管理職における役割認識では、組織の目的を自分事として捉え、どのようにしたら、利益を生み出せるのかを考える意識改革が必要となり、管理職としての役割定義を明確にし、上席が期待する役割を聞き出し、チームメンバーにそれぞれの役割を理解させることが大切です。
役割認識は、管理職の階層によっても異なり、管理職研修をおこなううえで最も大切な意識改革のため、管理職研修のカリキュラムに必ず組み込まれています。
管理職に必要なスキルは自然に身につかない
管理職に必要なスキルは、日々の業務の中で自然に身に付くものではありません。
そのため、管理職に必要なスキルは、「管理職研修」によって身につける必要があります。
また、現在の中小企業の管理職は、プレイングマネージャーが多いため、部下の育成・管理まで手が回らないことが多く、企業内での研修実施が難しい状態となっています。
さらに、「成功者としてのプライド」が根付いている管理職の意識改革には、これまでの考え方を一度リセットして、自身の役割を再認識させる、管理職研修が必要です
管理職研修は厳しい研修ではない
近年は、ダイバーシティにおける対応や、ハラスメント防止、メンタルヘルス対策などに合わせ、働き方改革における労働管理や職場のあり方など、必要な知識や実践すべきことが多岐にわたります。
しかし、このような知識関連を主軸とした管理職研修や、1日だけの管理職研修など、「詰め込み式の厳しい研修カリキュラム」では意味がありません。
役割認識を主とした研修カリキュラムが大切
管理職研修で最も大切なことは、遵守すべき管理職としての役割を「しっかりと認識させる」ことです。
管理職として必要な知識を身につけたとしても、「意識改革」ができていなければ、何を詰め込んでも意味がなく、単なる知識として留まってしまいます。
管理職研修を実施する際は、「意識改革・役割認識」を重視したカリキュラムを選びましょう。
まとめ
管理職研修は、若手社員の成長および企業の成長に必要不可欠な要素です。
管理職に必要なスキルは、自然に身につくものではないため、研修によって身につける必要があります。
管理職研修では、「厳しい研修」を実施すればよいものではなく、「意識改革・役割認識」に重点を置いた研修が重要です。
企業の成長には、社員の教育・研修が必要不可欠ですが、管理職の教育・研修に力を入れていない企業がほとんどです。