また、多くの日本企業は新人研修には投資をおこないますが、管理職への教育投資はほとんどおこないません。
優秀な若手社員の採用・定着には、管理職の力にかかっています。
しかし、日本の管理職の多くは年功序列の延長線上、またはプレイヤーとして活躍した社員が管理職に就くことが多いといえます。
今回は中小企業の経営者や人事担当者を対象に「なぜ管理職研修が大切なのか?」ということを解説します。
管理職研修の意義
中小企業に限らず、多くの企業が新人研修は手厚く実施する反面、管理職の教育には十分に力を入れてこなかったという事実があります。
しかし、昨今のグローバル経済の変化や国内外での競争激化という経営環境の変化において、現場を指揮する管理職が企業の業績や目標達成に大きな影響を与えるようになっています。
そのため、企業が不確実性の高い経営環境に迅速かつ柔軟に対応していくためには、継続的な管理職の育成(管理職研修)が必要です。
管理職研修が必要とされる理由
仮に業務遂行能力や個人業績が評価され、管理職・マネージャーについたとしても、若手社員を育てるというスキルを持っているとは限りません。
日本企業は、OJTで業務を教えることはできても、成果を出せる社会人として教育するスキルを持たずにして、管理職となってしまうケースが多いといえます。
管理職の対人コミュニケーションの育成が必要
管理職研修が必要な理由に、管理職には優れた対人コミュニケーションが必要とされます。
部署やチームに所属する部下のまとめや関係部署との連携、事業部長や執行役員、取締役への説明など多岐にわたります。
特に若手社員とのコミュニケーションでは、近年、法制化が厳格化されたハラスメントなどコンプライアンスを遵守するあまり、適切に上司が部下を教育・評価できない状況が生まれています。
そのため、人事考課において、さまざまな評価エラーが発生し、若手社員が育たない、辞めてしまうという悪循環に陥っています。
プレイングマネージャーが多い日本企業
日本企業は、年功序列により実績を積まずして、エスカレーターのように管理職・マネージャーになってしまった人と、個人業績が優れていたために管理職になった人という二極化が進んでいます。
1990年代から氷河期と呼ばれる大不況時代に投入し、現在の管理職の多くが個人業績を上げた人が管理職・マネージャーについています。
そのため、「プレイングマネージャー」と呼ばれる管理職はチームのマネジメントだけでなく、マネージャー自身にも高い目標と実務を持っており、「部下の育成や指導に十分な時間をかけられない」と悩む管理職が増えています。
一方で、職能評価制度で明確な目標の達成・不達成にかかわらず、業務遂行能力のみで何となく管理職になった方も多いといわれています。
今後、中小企業が過酷な競争社会を生き抜くために、前者のような実績を上げられる人材を増やしていく(いわゆる成果主義やジョブ型)方向に舵を切りつつありますが、必ずしもこうした人事考課制度は正解ではありません。
なぜなら、近年では成果や目標を明確にし、シビアに達成したかどうかを見ると同時に「どうしてそのような成果に基づいたか?」というプロセスや業務内容を評価し、人事考課に反映させることが、成長する社員を生み出すカギとなるからです。
こうした、評価者になるマネージャー・管理職がチームメンバーのプロセスや業務内容を評価するためには、優れたコミュニケーションが必要であり、かつての業績を上げられるプレイングマネージャーには身に付きにくい能力でもあります。
そのため、管理職には、組織課題を明確にし、組織目標を達成させるためのプロセス(判断に至った理由や行動内容)を聞き出すコミュニケーション能力が必要となります。
「中小企業は社員の距離が近いから大丈夫」という勘違い
中小企業の中には、従業員が10~20人という会社も多く、従業員数100人未満の中小企業は多数存在します。
時折、そんな中小企業の中で起きることが「社員同士の距離が近いからコミュニケーションは取れている」という勘違いです。
しかし、多くの場合、コミュニケーションが取れていると考えている経営者やマネージャー・管理職ほど、実際には全くコミュニケーションが取れていないことが多いといえます。
社員同士の距離が近いから、いつでも話しかけることができるし、部下への指示や管理もおこなえていると思い込み、実際に部下やチームメンバーが会社や上司に対して、どのような想いを抱いている管理職は大勢いらっしゃいます。
これは、社員同士の距離が近いからこそ、きちんとしたコミュニケーションが取れていないという状況が生み出されているといえます。
同時に社長と社員の距離が近いこともマイナスに働くことがあります。
社長が直接現場に指示をすることで、管理職が本来果たすべき役割を果たせず、管理職の存在自体が形骸化してしまうこともチームとして成果を出す足枷となってしまいます。
その結果、マネジメントの仕組み(管理職によるオペレーション)が確立されず、「社長が動かなければ、現場が動かない」という組織が機能不全となります。
管理職のスキルは自然と身につくものではない
管理職のスキルは、管理職研修をおこなうことで身につけることができます。
現在、中小企業の管理職はプレイングマネージャーが多く、自分の仕事に加えて、部下の管理までおこなっており、完全なキャパオーダーとなっています。
また、日本企業も新人研修は手厚く行いますが、管理職研修はまともに実施していないことが多く、特に中小企業では財務面の理由から管理職を育てる余裕すらないといえます。
しかし、若手社員を成果を出せる社員に育成するためには、管理職の力が必要であり、管理職研修をおこなうことが重要となります。
管理職研修の特徴
管理職研修では、主に「上司としての役割の認識」と「上司と部下とのコミュニケーション」の2つの軸でおこなうことが効果的です。
とくに中小企業の現場を指揮するマネージャーが、チームでパフォーマンスを高めるためには、この2つの軸が必要不可欠です。
役割とコミュニケーションの方法を知ることで
を学ぶことができ、現場で活かすことができます。
管理職研修で重要なカリキュラム
管理職研修では、リーダーシップ論や組織論など難しい内容を教える必要はありません。
そもそも管理職のスキルには、リーダーシップという能力はほとんど必要なく、最も重要なスキルは対人コミュニケーションであり、フォローアップ能力です
また、そもそも「マネージメントスキル」を有した上で管理職になった人はほとんどいないと考えるべきであり、まずは「マネジメントとは何か」ということを理解させる必要があります。
管理職のあり方や「マネジメントとは」というレベルから概念や考え方を学ぶ必要があります。そのうえで、部下やチームメンバーが自ら成果を出すためのプロセスや判断をおこなっていくためにフォローアップをしていくことの重要性を学びます。
今後、管理職やマネージャーに必要なことはリーダーシップではなく、フォロワーシップであることをしっかりと学ばせるカリキュラムこそが、管理職研修の最大の目的といえます。
言葉だけは知っている状態を失くす
管理職になれば、ティーチング、コーチング、トレーニングといった管理職がおこなう業務の言葉を聞く機会が多くなります。
しかし、本当の意味でそれらの言葉の意味を知り、現場で実践している管理職は少数派です。
もし、今回のコラムを読まれている方が人事担当者や管理職の方の場合、ティーチング、コーチング、トレーニングの違いをすぐに説明できるか、確認してみてください。
面談の方法や職場環境の重要性を知る
マネジメントがしっかりできていない管理職の多くが、適切な面談の方法や意見を知らない、不満を言いやすい職場環境を構築していないことが多いといえます。
多くの中小企業には、未だにお酒の席で部下の本音を聞き出そうとする管理職が多く、適切なコミュニケーションをおこなっていません。
部下やチームメンバーの本音を聞き出すための面談の方法や環境(雰囲気)の作り方など、管理職研修でしっかりと伝えていく必要があります。
大橋高広の管理職研修について
大橋高広が提供する管理職研修カリキュラムは、管理職に特化した研修カリキュラムをご提供しております。
「管理職のあり方」「部下育成」「部下面談」「人事評価・目標管理」「報連相・情報共有」「職場改善」の6つのステップで構成されており、必要な内容をご自由に選んでいただくことも可能です。
多様な人材が必要とされるからこそ、多様なソリューションで中小企業が抱える人材育成の課題を解決いたします。
管理職研修カリキュラムをご提供させていただきましたお客様からもご好評いただいております。
中小企業の管理職研修:まとめ
中小企業は、管理職への教育投資機会も少なく、従業員が少ないがためにコミュニケーションが取れていると錯覚しがちです。
名刺の渡し方や挨拶の仕方を、わざわざ講師が対面で教えている新人研修がありますが、今の時代、定型的な研修は動画研修で十分です。
本当に研修が必要な人材はマネージャーや管理職であり、新人を成果を出す社員に育てるための重要な投資でもあります。
大企業が、年功序列・終身雇用を前提とした働き方を改め、成果を重んじる職務給・ジョブ型制度への移行が進む中、中小企業の多くは従来の働き方を踏襲しています。