即戦力ではない新人だからといって、形式的な新人研修は会社のためになりません。
また、2022年4月1日からパワハラ改正法(改正労働施策総合推進法)の対象が中小企業にも広がります。
近年、パワハラと訴えらえることが怖くて、新人教育ができない管理職が増えています。
毎年くる新人研修をどんな風に取り組むべき課題を持つ中小企業は増えています。
今回は経営者や管理職が知っておきたい「新人をどうやって育てていくか」という点を大橋高広の著書である『バカはブラック企業に入りなさい┃大橋高広(徳間書店)』の内容をご紹介しながら、解説いたします。
社会人マナーはオンライン研修で十分
新人研修の代表的な研修内容に、名刺の渡し方や挨拶の仕方、エレベーター立ち位置、座席の順番、発声練習が挙げられます。
どれも社会人生活を送る上ではとても大切なビジネスマナーです。
しかし、こうしたビジネスマナーの研修はわざわざ外部から専門家を招致し、対面によるオフライン研修でおこなう必要があるのでしょうか。
最近では、オンライン研修が広まりつつあり、マニュアル化しやすいビジネスマナー研修はオンライン研修で十分です。
※Z世代と呼ばれる新卒新入社員は、勉強や教養を動画(YoutuieなどSNSも含む)で習得しています。
本当に必要な新人研修は、ビジネス社会で必要な「聞く力」・「聞く姿勢」に代表される会話を成立させることができるコミュニケーション力です。
本来、新人研修はビジネス基礎力を身に着ける場として活用すべきといえます。
マニュアル化されたビジネスマナーはオンライン研修で十分。本来、必要な新人研修は「聞く力」、「聞く姿勢」など仕事をおこなう上で必要なビジネス基礎力
記事を取得できませんでした。記事IDをご確認ください。
なぜ聞く力・聞く姿勢を養う必要があるのか?
長年、新人研修を含む中小企業の研修に携わってきた大橋は、新人研修では「聞く力・聞く姿勢」をしっかりと身に着けさせる必要があると考えています。
なぜなら、新人に「聞く力」、「聞く姿勢」がない場合、その後の新人教育に大きな支障をきたすからです。
仮に新人研修でビジネスマナーをおこなわなかったとしても、本や動画で学び成すことは可能ですが、「聞く力」や「聞く姿勢」を対面で学ぶ機会は新人研修を除けば、ほとんどありません。
多くの企業は新人研修にはお金と時間を費やしますが、管理職研修にはほとんどお金をかけません。
そのため、新人教育でビジネス基礎力である「聞く力」・「聞く姿勢」を身に着けぬまま、管理職に登用してしまう危険があります。
- 話を聞かない、聞けない新人の教育に苦労する
- 将来、コミュニケーション力が低い管理職ができあがってしまう
お辞儀や発声、名刺の渡し方はオンライン研修でおこない、対面研修では「聞く力」・「聞く姿勢」を養う新人研修をおこない、会社の未来を守りましょう。
2022年4月以降、昭和・平成の新人教育はできません
なぜ新人研修で、「聞く力」・「聞く姿勢」を身に着けさせる必要があるのか?
それは2022年4月に中小企業を対象にしたパワハラ防止法が施行されるからです。
正式名、改正労働施策総合推進法はは2020年6月1日から施行され、今までは大企業を対象にしていましたが、2022年4月から中小企業も対象に含まれます。
パワハラ防止法の内容は以下の通りです。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- 労働者の就業環境が害される
中小企業にも上記のパワハラ基準が定められ、企業には事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応が求められます。
つまり、昭和・平成でおこなっていたようなOJTの場でのパワハラまがいの叱咤激励の教育は労働法違反となります。
このような状況で最も困るのが、しっかりとした管理職研修を実施してこなかった管理職本人です。
現在、企業の中核となっている管理職はバブル崩壊後の2000年代入社世代や、リーマンショック・東日本大震災の不況のあおりをうけた世代です。
彼らは業務遂行能力や成果主義におけるビジネス力には長けていますが、十分な新人研修・管理職研修を受けずに管理職に登用された方も少なくありません。
中間管理職は上層部と部下との間に挟まり、いわば、身動きが取れない状況で新人教育を担当することなります。
ホワイト企業こそ問題だらけという現実
世の中には、ホワイト企業とブラック企業という揶揄された企業が存在します。
一般的なブラック企業は労働基準法を無視した企業を指します。では、ホワイト企業はどんな定義がされているのでしょうか。
- コンプライアンス遵守
- 新卒入社の離職率が低い
- 残業時間が少ない
- 人事評価制度が明確である
- 研修制度が整っている
- 女性が活躍できる環境
- 福利厚生が充実している
この中でもコンプライアンス遵守というものが厄介であり、「残業時間が少ない」にも直結しますが、時間外労働時間の上限規制が導入されて以降、原則として月45時間・年360時間までしか残業できません。
そのため、残業時間が少ないため、仕事を家に持ち帰るなど形ばかりの働き方改革が横行しがちです。
また、コンプライアンス遵守は管理職の成長にも影響を与えます。
「早く帰れ」、「休め」という言葉を繰り返すだけで、本当の職場の問題を改善しない管理職が現れます。
このように思考停止してしまった管理職は、聞く力・聞く姿勢を持っていない新人を教育することはほぼ不可能といえます。
パワハラといわれることが怖い管理職たち
近年、ハラスメントによる自殺が労災認定されるなどハラスメントを起因した労働トラブルは社会問題化し、会社にとっても見過ごせない重要な経営課題です。
その結果、経営者も管理職も部下のの教育には神経を尖らせており、OJTでの新人教育が年々難しくなっているという声を聞きます。
こうした職場の問題から目をそらず、企業の売上・利益に貢献する社員を育てるためには、新人研修で聞く力・聞く姿勢を養うことが大切です。
もう一度、お尋ねします。
「あなたは本当にコンプライアンスを遵守したまま、部下の育成ができますか?」
\1on1面談のやり方が掲載された全13ページの研修資料付/
二極化する新人
誤解を恐れずにお伝えすると、近年の新人は二極化している傾向があります。
ひとつは「仕事はそこそこ、無理に出世せず、ワークライフバランスを取りたい」という新人。もうひとつは「若いうちに残業もいとわず、とにかく社会で通用するビジネスマンになりたい」成長意欲の高い新人。
VUCA時代といわれる不確実性の高い時代において資本力が高い大企業に安定を求める姿勢、終身雇用が崩壊し、日本を代表する大企業の社長が「45歳定年制度を導入するべきだ」という発言が物議をさらしたように、会社に依存せず、個人で生き抜くビジネススキルを求める姿勢、どちらの意見も正しいと思います。
しかし、「成長を求めない人」ほど大企業に行く割合が高いといえます(もちろん、一部の優秀な方は大企業でも成長し、幹部候補になる方もいらっしゃいます)。
効率優先・マニュアル化された業務が多い大企業(ホワイト企業)は、いずれAI・ロボットに業務を集約し、今まで従事していた担当者は職を追われます。
黒字にもかかわらず、45歳以上を対象にした早期退職勧奨(近年は大企業で30歳以上が対象になる例も目立つ)を実施している企業が増えていることもその証です。
また残念ながら、不確実性の高い時代で生き残れるのは「成長したいバカ」だけです。
成長を求める新人が集まりやすい中小企業
現実の話をすれば、今、人気の高いM&A会社やIT企業の多くはベンチャー企業・中小企業から始まり、その組織風土を受け継ぎながら、日々成長しています。
さらに言えば、「成長したいバカ」が集まる企業は中小企業が多く、どん欲に働きたい新人が多いといえます。
会社としてはありがたい限りですが、前述の通り、時間外労働の上限規制が実施されており、さらに2022年4月から実施される改正パワハラ法も控えていることから、新人教育の方法に頭を悩ます経営者・管理職が増えています。
社長・管理職の代弁となる新人研修
大企業・中小企業に限らず、「コンプライアンスを遵守したい、だけど新人には厳しく教育したい」と考える経営者や管理職は増えています。
そこで頼れる存在が外部人材による新人研修です。新人研修の多くは外部のコンサルティング会社を通じて実施されますが、新人研修の多くがビジネスマナーに費やされてしまいます。
しかし、冒頭で説明した通り、ビジネスマナーなどマニュアル化された研修はオンライン研修で十分です。
ビジネス社会で本当に必要な「聞く力」・「聞く姿勢」を新人研修に組み込むことで、成長意欲の高い新人はより成長の早い人材へ、そうでない人材は危機感を持ち業務にあたるようになります。
大橋高広は、著書『バカはブラック企業に入りなさい┃大橋高広(徳間書店)』で紹介している内容を基に、新人が職場で”本当に成長できる人材”に成長させる新人研修の実施が可能です。ぜひご検討ください。
優秀な人材に育てる新人研修:まとめ
新人を優秀な人材へと成長させるには、最初の新人研修が肝心です。
ビジネスマナー研修は隙間時間にオンライン研修で繰り返し受講させることが可能ですが、成長に必要な「聞く力」・「聞く姿勢」は対面によるオフライン研修しか習得できません。
その後のOJTによる新人教育やマネジメントスキルに長けた管理職を輩出する上でも新人研修はしっかりと吟味し、導入しましょう。
毎年、おこなわれる新人研修は本当に機能していますか?