また、人事評価は上司と部下との信頼関係にも大きく影響します。
この点を軽視すると、優秀な社員が次々と退職していき、最悪の場合、組織崩壊にもつながりかねません。
今回は管理職が身に着けておくべき「人事評価を改善する」技術を中心に解説します。
また、この「人事評価を改善する技術」は大橋高広『リーダーシップがなくてもできる「職場の問題」30の解決方法┃大橋高広(日本実業出版)』にも詳しく解説しております。
1on1面談シートも役立つため、ご興味がある方は無料で提供しておりますので、こちらも併せてご利用ください。
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人事評価の基本「定量評価」と「定性評価」
人事評価には、数値で成果を評価する「定量評価」と数化しにくい「定性評価」の2つがあります。
定量評価は対前年比売上や営業獲得件数など判断材料がわかりやすく、主に営業職が多い会社で採用されています。
一方で、定性評価は判断基準が曖昧になりがちですが、数値だけで測る要素以外の評価を入れ込むことが「職場の生産性を高めるのに必要不可欠」と考えている日本企業が多く、評価シートの評価項目に含まれています。
しかし、定性評価に以下の問題があります。
評価者よって、評価がまちまちとなる。評価が上司次第になるため、その結果、被評価者からは不満が噴出しやすくなる
評価者によって、人事評価ばらつく定性評価は「上司ガチャ」と揶揄される根本的な原因は、評価者となりやすい管理職に十分な研修や教育を受けさせてこなかった会社にあります。
上司と部下の信頼関係が定性評価を機能させる
定性評価を機能させ、職場の生産性を高めるには、結局、上司と部下との信頼関係を構築する必要があります。
しかし、上司と部下との間に信頼関係を築くには特別な能力や方法、ましてやモチベーションクラウドなどITツールは必要ありません。
- 普段から上司が部下の働きぶりを正確に把握する
- 仕事ぶりを観察し、具体的に記録に残す
- 少なくとも月次面談を行い、評価事実(人事評価の対象となる事実)を収集する
具体的な評価事実を積み重ね、部下との面談で事実をか確認し、評価をしてあげることで、評価に対する部下の納得感を醸成し、信頼関係を築けます。
「部下との事前合意」が定性評価の基準を作る
数値化が可能な定量評価は具体的に評価軸を決めやすく、人事評価を公正なものにできます。
一方で、定性評価にも定量評価と同じく、判断基準を評価者である管理職にゆだねるのではなく、会社や人事部が管理職が収集するべき評価事実を作る必要があります。
しかし、多くの会社では定性評価の判断基準を制定していることは多くはありません。
そういう場合、上司と部下との間で定性評価における判断基準を事前に合意しておくことが効果的です。
これを「基準のわかる化」と呼んでいます。具体的な評価事実を明確化し、上司と部下が共有する事で、上司は評価事実を収集・記録しやすくなり、部下は評価基準に応じた行動が取りやすくなります。
「基準のわかる化」は以下のステップで作りこんでいきます。
標準点に対する基準を作成する
まずは「できた」とするレベルである標準点(5段階評価なら3点)の基準を明確にします。
標準点の認識を共有
標準点の評価基準を上司と部下で認識を共有します(面談などで共有)。会社側の3評価は良い評価として考えていても、従業員は良くないと判断していることがあります。このように標準点を明確にしておくと、上司と部下の評価に対する認識のずれが起こりにくくなり、評価に対する不満を軽減できます。
良い評価・悪い評価の基準を明確化
標準点の評価基準に評価項目をプラスして、良い評価の評価基準を作ります。悪い評価も標準点の評価基準にマイナスとなる評価項目を明確にします。
標準点の評価基準に評価項目をプラスして、良い評価の評価基準を作ります。悪い評価も標準点の評価基準にマイナスとなる評価項目を明確にします。
職場の問題を改善するために必要なもの
職場の問題を改善するために必要なものは、優れたツールやノウハウではなく、管理職を起点としたコミュニケーションです。
今回、ご紹介した「人事評価を改善する」も基本的に管理職のコミュニケーションスキルに大きく関係してきます。しかし、管理職に責任を求めることは酷です。
今までの日本企業はITツールや新人教育には投資はしていても管理職の育成・研修には、あまり投資してこなかったといえます。
なかでも管理職はテクニカルスキル(業務遂行能力)やコンセプチュアルスキル(概念化能力)などは手厚くサポートされてきましたが、肝心のヒューマンスキル(対人関係能力)は現状何ら対策されていません。
上司と部下が信頼関係を構築し、適切な人事評価を実施するためには、会社が管理職に部下との面接を実践するためのヒューマンスキルを強化する取組を導入することが先決といえます。
今回、ご紹介した「人事評価を改善する」技術を含め、職場の”本当の”問題を解決するために、管理職が身につけておきたい解決方法30を記した大橋高広最新刊『リーダーシップがなくてもできる 「職場の問題」30の解決法(日本実業出版社)』もぜひご参考ください。
『人事評価を改善する』技術:まとめ
人事評価は上司も部下も神経質になりやすい課題です。
会社や人事部が評価軸を曖昧なまま人事評価制度を構築すると、職場環境の悪化や優秀な人材の体力につながってしまいます。職場の"本当の"問題は何かを突き止める上でも管理職のスキル向上は必要不可欠です。
今回、ご紹介した上司と部下との信頼関係を構築するための方法を実践しつつ、「会社や人事部にできることは何か?」と見直すきっかけになっていただければ、幸いです。
人事評価は従業員のモチベーションと組織への帰属意識を高め、結果的には職場雰囲気の改善や生産性向上にもつながり、採用や退職率の低下などにも効果があります。