なぜ職場の問題がなくならないのか?その理由はとても簡単です。
単純に「職場の”本当の”問題を知らない」からです。
多くの職場改善のノウハウが機能しないのは、この「職場の”本当の”問題」が見えず、的外れな施策をしているからに他なりません。
今回は最新刊『リーダーシップがなくてもできる 「職場の問題」30の解決法(日本実業出版社)』を発売した、株式会社NCコンサルティングの代表取締役社長で人事コンサルタント・ビジネス作家の大橋高広が"本気の"進言を行います。
- なぜ優れたノウハウやツールで職場の問題が解決できないか
- 職場の”本当の”問題を解決するために、本当に必要なもの
退職理由を”額面通り”受け取る組織
そもそも会社に優秀な人材が定着しない理由は、優秀な人材程、モチベーションが高いためです。
「モチベーションが高ければ、会社に定着してくれる」というのは、完全に現場を知らない経営者や管理職の思い込みです。
原因のひとつがHRテックをはじめとした人事評価クラウドシステムやモチベーション管理システムを導入したから安心だという慢心です。
では、経営者や人事担当者の方は、優秀な人材の”本当の”退職理由、本音を完全に把握しているでしょうか。
退職時の面談で「子どもができて、もっと給料が良い職場に移りたい」と賃金を退職理由にされたとき、多くの方が子の退職理由を額面通り、受け取ってはいないでしょうか。
賃金に関する退職理由は、退職者にとって、経営者や人事担当者が何も言えなくなる、つまり、「使い勝手がいい」退職理由です。
賃金の退職理由は、本当の退職理由(人間関係や職場の仕事の進め方が理由)を覆い隠すのに使われます。
このように職場の問題がなくならないのは、「本当の問題」がわかっていないせいで、「見当違いの対策をする→職場環境が改善されない→また別の見当違いの対策をする」の悪循環にハマってしまうからです。
\1on1面談のやり方が掲載された全13ページの研修資料付/
職場の問題を解決するために”本当に”必要なもの
職場の問題を解決するために必要なものは、ノウハウでも優れたツールでもなく、管理職を起点にした職場内のコミュニケーションです。
職場の問題を知るための職場内のコミュニケーションには、管理職の「テクニカルスキル」、「ヒューマンスキル」、「コンセプチュアルスキル」の3つのスキルが必要です。
- テクニカルスキル…業務遂行に必要な業務遂行能力や業務知識
- ヒューマンスキル…コミュニケーションや交渉、調整などの対人関係能力
- コンセプチュアルスキル…情報を概念化し本質をつかむつかむ先見性や洞察力など概念化能力
管理職には、最後のコンセプチュアルスキル(概念化能力)は経営に関わる能力になるため、企業も研修などで対象者を教育していきますが、職場でのコミュニケーションの中核になるヒューマンスキルに対して、研修や対策をする企業は少ないといえます。
また、職場の問題を解決するためには、管理職と現場の社員との面談が欠かせなく、この面談には高いヒューマンスキルが求められます。
つまり、職場の”本当の”問題点を見つけ出すために必要なものは管理職のスキルアップに他なりません。
ヒューマンスキルなしの1on1ミーティングは「最近どう?面談」とおなじ。職場の問題の解決はおろか、優秀な人材程、退職していきます
本当の問題は「会社発信の場当たり改善」
管理職を起点とした職場内のコミュニケーションが、職場の”本当の”問題を見つけるためにはとても重要ですが、職場改善の目的で導入した改善方法が思わぬ落とし穴になることがあります。
それが会議の場でのブレーンストーミングやホワイトボードや付箋など書き出して、上司と部下が一緒になって、改善方法を探る手法です。
断言しますが、上司や管理職系部署の人が見ている場で、社員が「本当の問題」を言い出すはずがありません。
しかし、会議で発言しないとモチベーションが低いと評価されるため、多くの社員は”当たり障りのない問題”を提言します。
また、こうした会議発言は現場が無視され、全体最適を目指してしまいます。
最たる例は上司が原因の職場の問題です。
上司が「なかなかハンコを押してくれないからプロジェクトが進まない」という問題に対して、会議の場で「上司がすぐにハンコを押してくれません」と発言する社員がいません。
そのため、属人的な原因に焦点があてられることなく、決裁管理システムや事務員の採用など全体最適の方へ向かってしまい、結局「上司の決裁スピードを改善する」という”本当の”理由が改善されないため、失敗に終わります。
本当に職場の問題を改善したい人のために
上司の中には、本当に職場の問題を改善したい人も少なからずいます。
しかし、組織の中では上司は忖度が働き、”本当に”職場の問題を改善したい人は少数であり、数の論理で排除されてしまいます。
”本当に”職場の問題を改善したい人は、さまざまな組織の見えない圧力によって、本当の問題をいうにいえず、悩んでいます。
私は現場で何人もの管理職と面談した際、「”本当の”職場の問題が改善できなかったら、もうこの会社を諦めて転職しようと思っています」という応える人が何人もいました。
リーダーシップがなくてもできる 「職場の問題」30の解決法
新刊『リーダーシップがなくてもできる 「職場の問題」30の解決法(日本実業出版社)』では、職場の問題を「聞き出す技術」、職場の問題を「共有する技術」、職場の問題を「改善する技術」の30の解決方法を解説しています。さらに管理職向けにリーダーシップがなくてもできる上司の仕事を「改善する」技術もご紹介しています。
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職場の問題が解決できない理由:まとめ
職場の問題が解決できない理由は、そもそも職場の”本当の”問題を把握できず、的外れな対策を実施していること、そして管理職の教育(ヒューマンスキルをはじめとした職場内コミュニケーションに必要なスキル不足)が原因です。
「上司は組織に忖度し、部下は上司に忖度する」
この当たり前の組織風土を受け取め、”本当の”職場の問題の原因を突き止め、ありきたりなノウハウやツールに頼るのではなく、現場の”本音”を聞き出さなければ、職場の問題は解決できないことを再確認しておきましょう。
優れた人事評価のクラウドシステムやモチベーション管理システムを導入しても、現場からはさまざまな問題が発生します。