その結果、「買い手市場にもかかわらず、人手不足」という矛盾した状況に陥っている企業も少なくありません。
今後、不確実性が高まる日本経済が予想される中、優秀な人材の確保が一層難しくなり、新卒入社希望も大企業にしか注目しなくなります。
今回は大橋高広が実践する、中小企業が実践したい採用ノウハウをご紹介します。
- 求める人材像を明確にした採用活動を行う
- 求職者にとって、知りたい情報が知れる採用プログラムをつくる
- 求職者と模範社員がコミュニケーションができる環境をつくる
- 買い手市場の場合、異業種からの引き抜きは注意する
なぜ優秀な人材を採用できないのか?
なぜ、中小企業の多くが優秀な人材を採用できないのか。
その理由は4つ考えられます。
- 求める人材像が抽象的である
- 「誰でも大歓迎!」の求人を出している
- 会社にとって、「良い人」を提示している
- 欲しい人材と出会う採用プログラムがない
採用がうまくいかない理由として、企業が求める人材像を具体化せず、まずは多くの人材と会ってみたいという理由から「誰でも大歓迎!」とも取れる求人を出していることに大きな問題があります。
求人票を見て、面接を受けにきた求職者は、求人票の内容と面接で提示された内容にズレがあった場合、たとえ内定を出しても辞退する可能性が高まります。
また、ターゲットが分からない求人票では、そもそも必要としている人材は集まりません。
このターゲットを明確にした求人は、求職者に明確なキャリアパスを提示する役割もあるため、会社にとって「良い人」と求職者が考える「会社にとって良い人」に大きな乖離を生むきっかけにもなります。
こうした、採用段階でミスマッチを誘発する採用体制を見直し、自社にとって欲しい人材と出会う採用プログラムを再構築することが大切です。
- ヒアリングで、部署・役職毎に求める人材像を洗い出し、社内で共有する
- 賃金に幅を持たす場合、それぞれの求人票を作成し、ターゲットを明確にする
- 能力、業務、役割、成長期待、コンピテンシーなど必要な条件を満たす人材の採用を目指す
- 場当たり的な採用活動から脱却し、再現性のある(求人広告→書類選考→面接→内定)採用プログラムをつくり、継続的な改善を行う
人材採用もマーケティングが基本となる
販促だけなく、人材採用もマーケティングが基本となります。
ハローワークや人材会社任せにせず、欲しい人材のどのような行動をするか予測・分析し、適切な媒体を選択しましょう。
求人媒体例
学校 | 先生、キャリアセンター、学内求人、OB・OG |
メディア | 自社の採用専用ホームページ、就職サイト、SNS、新聞広告、求人情報誌、フリーペーパー |
クチコミ | 社員・知人からの紹介 |
サービス | 合同就職説明会、人材派遣、ヘッドハンティング |
公共機関 | ハロワーク、地方自治体が運営する就職支援機関 |
その他 | インターンシップ |
抽象的な自社の魅力は逆効果
一方で、求職者目線での自社の魅力を発信することも大切です。
「アットホームな職場」や「さん付けが通用する、風通しが良い社風」などの抽象的な内容は伝わりません。
成果主義による明確な人事評価や副業可・フレックスタイム制・テレワークを導入した勤務体制、出産立ち合い制度・親孝行制度・リフレッシュ特別休暇などのユニークな福利厚生、成果を出せる具体的な研修制度、明確なキャリアパスなどが求職者目線の自社の魅力となります。
また、こうした自社の魅力は販促用や会社ホームページでは伝わりきりません。採用向けホームページや採用専門のパンフレットを作成しましょう。
競合他社を分析し、求職者目線の自社の魅力の再発見につながり、適切な媒体で効果的な発信ができる
オンライン採用でもコミュニケーションが大切
リファーラル採用やダイレクトリクルーティング、オンライン会社説明会、オンライン面接が浸透しつつある中、採用企業のコミュニケーションの「質」が重視されつつあります。
採用で必要なコミュニケーションの「質」とは、求職者が知りたい情報(現場のリアルな情報)を伝えられることを意味します。
経営者や人事担当者だけが経営理念や社風を一方的に伝えるのではなく、ブログやSNSを活用し、若年層(~30代)の求職者は在職者や過去の在職者、採用面接を受けた人などの「生の声」を求めています。
- 会社を認知してもらえる確率が高まる
- 会社のファンづくりにつながる
- 応募へのモチベーションが上がる
また、オンライン会社説明会やオフラインの就職説明会に関係なく、求職者と模範社員がコミュニケーションを取れることも大切です。
模範社員との交流は、リアルな職場を知る機会にもなり、親近感や選考に進むモチベーションにもつながります。
求職者と模範社員がコミュニケーションが取れる会社説明会の開催が重要です。
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会社と求職者は対等の立場である
売り手市場、買い手市場に関わらず、企業が採用を行う際、求職者の立場は弱くなってしまいがちです。
しかし、優秀な人材を獲得するためには、「会社と求職者は対等な立場である」ことを認識しなければなりません。
面接において、一方的に志望動機など形式的な質問をする企業は、求職者が会社へ質問する機会をつぶしているといえます。
選考が進むにつれて、会社役員や管理職が面接官を担当する機会が増えるため、求職者が質問しにくい雰囲気が醸成されます。質問したい内容を事前にもらう、質問しやすい雰囲気をつくるなどの工夫をしましょう。
求職者が働きたくなる人事制度の構築を!
優秀な人材を確保するためには、社員が将来を思い描けるキャリアステップや計画性のある育成プログラムの確立が必要です。
明確なキャリアステップ(キャリアパス)や育成プログラムは求職者の安心感につながります。
OJTはあくまで社内教育の一環であり、現場任せの社員教育は求職者の不安を助長してしまいます。
「いつ」、「誰が」、「何を」教えるのが明確である教育体制の確立は求職者の安心感につながります。
また、上司以外にも相談できるメンター制度の導入も検討しましょう。
管理職の全員が部下の悩みを解決できるスキルを有しているとは限りません。入社3年目以上の若手社員(歳が近く、聞き上手)にメンターを担当してもらうことで、直属の上司だからこそ相談できない内容の解決につながります。
「異業種からの引き抜き」を安易に考えてはいけない
現在、時間外労働(残業)の上限規制や経団連の「終身雇用が限界を迎えている」発言、不確実性の高い日本経済などを背景に、副業を推進する企業も増え、大企業でも週休3日制(給料2割減)の議論が活発化しています。
その結果、中小企業にも大企業出身・異業種の優秀な人材を雇用できる機会が多いといえますが、ここでも思わぬ落とし穴が存在します。
キャリアアップや向上心といった理由で、異業種から求職してくる方だけではありません。
不景気や有事など致し方ない理由での転職や出向を余儀なくされた人材には特に注意しなければなりません。
たとえ買い手市場であっても、きちんとした教育体制やキャリアパスを提示できるかどうかが、優秀な人材の確保・定着に欠かせないことだと認識しましょう。
中小企業のための人材採用実践ノウハウ:まとめ
中小企業における人材採用は、求人票の内容から自社の魅力を抽象的な内容にしがちです。
また、求職者が本当に知りたいキャリアパスや研修プログラム、福利厚生を明確にすることで、求職者の安心感につながります。
採用する企業と求職者双方のコミュニケーションを大切にし、まずは「会社と求職者は対等の立場である」と認識することから始めましょう。
インターネット技術の向上やSNSの役割が高まる中で、求人の露出方法が増えた一方で、人材採用の手法が高度かつ複雑化しています。