最近では、ギグワーク(1~3時間の短い時間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方)という新しい働き方も増え、事業の特性を踏まえた上で必要な時に必要なだけ外部のプロ人材を登用する動きも加速しています。
そのため、企業が持続可能な成長を遂げるためにはテレワークを機能させる組織の再構築が必要です。
今回はテレワークを機能させるための人事術、とりわけマネジメントを担当する管理職(上司)の育成の重要性について、解説します。
- なぜテレワークは既定路線なのか
- 従来の管理方法が限界に近付いている理由
- テレワークを機能させるための必要なもの
- テレワーク時代は管理職以外に必要な役割
テレワークの推進は避けられない
2020年は”10年はかかる”といわれた働き方の多様化が一気に推進した年でもあり、そのひとつであるテレワークは今後も推進していくことが既定路線となっています。
企業にとって、通勤手当よりも在宅勤務手当の方がコスト削減(上限15万円/月の非課税を考慮しても)のメリットが強く、生産性の可視化を通じた従業員満足度や企業価値の向上に期待が寄せられています。
また、オフィス勤務では判明しなかった、貢献度が高い従業員の再発見にもつながります(今まで貢献していたと思い込んでいた社員が貢献度が想定以上に低かったと判明することもあります)。
一方で、従来型の雇用慣習(年功序列型賃金や終身雇用)が限界になっている現代では、テレワークは成果を重視した人事評価とも相性がよく、定期昇給を廃止する大手企業にとっても、テレワークの推進はセットとなりやすい傾向があります。
不確実性が増した世界経済の中で日本企業が生き残るためには、従来の働き方や雇用形態への変革が必要であり、多様な働き方を推進する上でもテレワークは欠かせない手段です
テレワークとは、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスの利用などの総称で、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方です。
「監視する」管理方法は限界
テレワークの導入に否定的である経営者や管理職(上司)の意見として多いのが「目の前で見ていないと、従業員がきちんと働いているかどうか判断できない」という意見です。
そもそも従業員の役割や成果(期限付きの業務内容)が明確であり、従業員が自立して目標を達成するための方向性やプロセスをフォローする体制が確立されていれば、管理職の監視による管理は必要ありません。
しかし、社員の自立を前提とした組織には限界があります。
管理職(上司)の監視に依存しないテレワークの体制を構築するためには、管理職と現場社員(上司と部下)のオフラインでの信頼関係の構築が重要となります。
多くの管理職は「自分の目の前にいないと現場社員は仕事しない」という先入観を持っていることが珍しくありません。
テレワークを推進していくためには、管理職を含めた従業員の「心理的安全性」を確保できるかにかかっています。
そこで、大切なのが管理職(上司)のテレワーク上での役割です。
テレワークこそ上司の面談が重要
従来のオフィス勤務では、目の前に現場社員がいるため、上司がわざわざ面談を設置する必要性がありませんでした。
しかし、テレワーク体制こそ上司による面談が重要となります。
朝礼や昼休憩、終礼のタイミングで声をかけ、現場社員の心理的安全性を確保する取り組みを行いましょう。
必要と感じれば、Web会議ツールを使って、面談に応じます。
また、テレワークでは働き過ぎによる労務管理上の懸念も考慮しなくてはなりません。
本来、業務時間が超えているにもかかわらず、自宅でサービス残業を行っている社員がいた場合、労働トラブルに発展する恐れがあります(2020年4月を以て、中小企業を含む時間外労働の上限規制が施行)。
そのため、従業員からの残業申請もWebシステム上で完結するのではなく、1on1ミーティングを通じて、残業申請を行ってもらうようにします。
- 朝礼・昼休憩・終礼のタイミングで声をかける
- 残業申請も1on1ミーティング上で行う
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テレワークを機能させる方法とは
放任主義から脱却し、テレワークが機能する組織を作り上げるためには、オフラインでの管理職と現場社員(上司と部下)の信頼関係の構築が大切です。
また、対面ではないオンライン上のコミュニケーションにおいても工夫が必要です。
- オンライン会議にも進行役をつける
- コミュニケーションリーダーを任命する
オンライン会議にも進行役をつける
オンライン会議にも、オフライン会議と同様に進行役(ファシリテーター)をつけることがおすすめです。
オフライン会議は対面による会議のため、会議の進行が感覚的につかめますが、オンライン会議ではそうした感覚をつかむことが難しいといえます。
また、進行役をつけることで無駄な会話を防ぎ、要点が整理された上で議論が展開できます。
オンライン会議では、雑音防止のミュートの切り替えや共有資料の表示といったオンライン特有の依頼もしなければなりません。
オフライン会議では必要のなかった指示もオンライン会議では必要となるため、必ず進行役をつけます。
コミュニケーションリーダーを任命する
テレワークは、オフィス勤務と違い、ちょっとしたコミュニケーションができず、社員が孤立してしまう可能性があります。
気軽に相談できるメンターや管理職がいないため、社員によっては生産性が低下する恐れがあります。
そのため、PJチームごとに最低ひとりはコミュニケーションリーダーを任命し、管理職のフォローに充てるようにします。
オフラインでは、四六時チームメンバー全員を見渡し、様子を確認できましたが、テレワークでは事実上、不可能です。
管理職が担っていたコミュニケーションを、コミュニケーションリーダーに分割することで、マネジメントの負担を軽減できます。
その結果、孤立している社員や進捗が芳しくない社員をいち早く見つけ出し、迅速なアフターフォローが可能となります。
テレワークを機能せる方法:まとめ
今後もテレワークと成果を重視する人事評価を導入する企業が増えてきます。
そのため、従来のマネジメント体制を見直し、多様な働き方を推進できる組織を構築していくことが、企業が生き抜く鍵となります。
オフィス勤務でもテレワークでも、生産性の高い社員を生み出すには、管理職(上司)の役割が大切です。
放任主義・社員の自立に依存したテレワーク体制は、必ず綻びが生まれ、機能しなくなります。まずはテレワークに対するマネジメントを管理職に学んでもらう機会を生み出すことから始めましょう。
大企業を皮切りにテレワークが一気に普及し、地方に本社機能を移転する企業や地方暮らしで業務を行う社員が増えていきます。