また、SPI検査や筆記試験を実施することで、自社と求職者のマッチングや、業務に対する求職者の適性をみている企業もあることでしょう。
しかし一方で、面接を何度も繰り返し実施し、求職者の適性や能力あるいは人間性などをよく見極め吟味して採用したはずなのに、若手の早期離職が止まらない・良い人材が採れないと頭を抱えている人事担当者の方も多いのではないでしょうか?
今回は、採用後のミスマッチや早期離職を防ぐために、SPI検査と面接以外の方法で実践すると効果的な採用試験についてご紹介したいと思います。
よくある採用試験の方法と流れ
効果的な採用試験をご紹介する前に、まず、通常の採用フローで使われている採用試験の方法や流れについて確認していきましょう。
書類選考(履歴書・エントリーシート)
選考の初期段階として、書類選考を用いている会社が多いのではないでしょうか。
所定のルールを守っているか・誤字脱字がないか・企業との適性を持ち合わせているか・求職者と企業の将来性が適合しているか、などを主に合否の判断材料としていると思います。
この他に、学歴を判断材料にして足切りをすることもあれば、逆にエントリーシートの記述が丁寧であったり、送付状が添えられていると通過率を上げるなど、判断基準は会社によって様々です。
SPI検査(筆記試験)
こちらも、選考の初期段階として採用試験に用いている企業が多いです。
そして多くの企業は、このSPI検査と書類選考の2段階で、求職者をふるいにかけることが多いでしょう。
SPI検査は大きく分けて「能力検査」と「性格検査」の2つがあります。
能力検査では、求職者が持つ特性や、どのような仕事や組織に向いているかなどを把握します。
そして、性格検査では「あまり人とは喋らない」「積極的に動くほうではない」と回答した求職者をマイナス評価にしている企業が多いのではないでしょうか。
集団面接
書類選考とSPI検査で求職者をある程度ふるいにかけた後は、集団面接やグループワークに進みます。
面接官と求職者がそれぞれ複数名並び、面接官が求職者へ質問する形式の面接です。
この時点での質問内容は、同一の質問を全員に聞いていくことが多いです。
集団面接において、合格・不合格の基準は企業ごとに違ってきますが、喋り方やマナーがきちんとしているか・思考が学生から社会人らしいものへ切り替わっているかについては、よく見ているポイントだと思います。
また、質問の受け答えに対して、ありきたりではなく、自身の考え方がよく分かるような回答をした求職者が面接官の目に留まる傾向にあります。
個人面接
選考の最終段階に進むと、面接官複数名に対して求職者1名の個人面接に進みます。
この時の面接官は、中小企業では社長や専務、大企業ならば部長など部署の責任者が担当することが多いです。
個人面接は、基本的にエントリーシートや履歴書などを元に質問をすることが多いため、面接官は、求職者がそこに記述した内容と、面接での回答に乖離がないかを見ていると考えられます。
また、面接官からの質問に答えているときの求職者の表情や声、姿勢など細かい部分までチェックしており、質問の種類も豊富で求職者ごとに変えています。
採用試験をSPI検査と面接に限定するリスク
このように、上記のような従来の採用試験は、中小企業・大企業関わらず大多数の企業が実施している方法ですが、これらの試験に共通していえることは、「求職者が事前に対策や準備をすることができる」ということです。
今の時代、面接やSPI検査の対策を目的とした書籍が溢れるほど流通しており、就活向けの話し方や立ち居振る舞いなどを学ぶマナー講座・講習会なども数多くあります。
また、スマホやインターネット・SNSの急速な普及により、採用試験の内容や種類に関して、求職者同士で情報共有される事も格段に増えてきました。
やろうと思えば、求職者がいくらでも対策をたてられる時代になったのです。
その反面、企業側は採用試験の内容を変えることなく旧態依然としており、どの企業もほぼ同じ方法で採用試験をしています。
そんな中で、万全に対策をしてきた求職者の本当の姿や特性を見抜くことができるでしょうか?
求職者が、希望する企業の内定をとるために努力するのは悪い事ではありません。
あるいは求職者自身が自分に合う企業・向いてる仕事を見つけることができるかもしれません。
しかし、企業が規模・業態・特性ごとに千差万別存在しているなかで、通り一遍の採用試験しか実施しないことは、採用の段階で早くもミスマッチを起こしてしまう恐れがあります。
そしてその結果、せっかく採用した社員が「思ってたより自分にこの仕事は合わない」「今の会社よりもっと自分に合う会社がある」と早期離職してしまうのです。
ミスマッチと早期離職を防ぐために実践したい採用試験
それでは、早期離職やミスマッチを起こさないためにはどのような採用試験を行えばよいのでしょうか。
人材流出を防ぐことに成功している企業が行なっている、効果的な3つの方法をお伝えします。
実技試験
先ほど申し上げたように、SPI検査では企業・職種への求職者のマッチング・適性をみることができますが、この検査の不確定な要素として、正直に回答する求職者もいれば、次の選考に進みたいために「正しい」と思われる模範回答をする求職者もいる、ということが挙げられます。
これでは、求職者の適性を正しく判断しているとはいえません。
そこで、SPI検査と合わせて実践してほしい方法が、実技試験です。
例えば、製造業の工場勤務なら、簡単な作業工程の一部をやらせてみる。
接客業なら、接客のロールプレイングをやらせてみる。
これは、技術職・事務職関わらず幅広い職種において取り入れることができる方法です。
企業が独自の実技試験をつくることで、企業ごとにより明確な合格基準ができるのです。
また、求職者側に実際の仕事内容を知ってもらうことで、入社後のギャップ・ミスマッチを減らすことができます。
実技試験を取り入れるにあたって、社員が現場で実際にこなしている実務の中で「求職者でも比較的簡単にできる試験」にすること、「求職者が企業理念や価値観を実現してくれそうかを判断できる試験」をつくることがポイントです。
さらに、実際に実技試験を実施する時は、その場に現場の責任者などが帯同することで、求職者の適性をより的確かつスムーズに判断できるでしょう。
実際に、知り合いの一部上場企業の役員へ、現場に関する質問をしたところ、「経営のことは分かるが、現場のこまかい事まではよく知らない」と言われたことがあります。
役員から見た採用基準も大事ですが、現場で実務をこなす社員や責任者から見た採用基準も非常に重要であると感じたひと言でした。
営業活動への同行
営業職に関しては、新卒採用・中途採用かかわらず多くの企業が人材を募集をしていることと思います。
優秀な営業マンを確保できるかどうかは、企業の売上・利益へダイレクトに影響すると言っても過言ではありません。
SPI検査や面接で、「自分は積極的に人に話しかけるタイプです」「アルバイト時代、お客さんと喋るのが得意でした」と回答する求職者であっても、学生と社会人ではやる事そのもののハードルが違いますし、営業方法も企業によって様々です。
そこで実践してほしい方法が、求職者の営業活動への同行です。
内定前の最終面接かその前段階の面接、若しくは最終面接前のリクルーター面談、といった段階で、求職者が社員と一緒に実際の営業活動に同行するのです。
そうすることで、求職者はその会社の営業活動がどんなものかを知ることができ、社員から見ても、その求職者が自社の営業活動に向いているかどうかの判断材料を得ることができます。
もちろん、営業活動の前後の時間に、社員と求職者のコミュニケーションをとる時間を設けても良いと思います。
この時、求職者と一緒に営業活動をする社員は、求職者と歳が近すぎず遠すぎない若手社員(入社5~6年くらい)で、会社の評価が高い人を選抜すると良いでしょう。
会社独自の採用基準を設ける
実技試験や営業活動への同行のような採用試験そのものの提案ではありませんが、ミスマッチと早期離職を防ぐためには「自社に合う」人材を採れるかどうかが重要といえます。
前述したように、従来の面接や試験において、性格検査で「あまり人と喋らない」「積極的に動くほうではない」と回答する、あるいは面接中にノックや挨拶といった基本的な礼儀ができなかった求職者をマイナス評価にしている会社は多いでしょう。
しかし、それだけでマイナス評価をつけてしまうのはまだ早いです。
そこで考えていただきたいのが、「自社で高パフォーマンスを出す社員や、高い業績・実績がある社員の行動特性」を導き出して、それを会社独自の採用基準にするということです。
世間一般ではマイナスといわれる行動をとった求職者が、仕事においても低い評価がつくかといえば、必ずしもそうではありません。
たとえば、
- 面接では挨拶がきちんとできなかったが、現場の仕事は黙々と丁寧にこなし、商品不良を一度も出したことが無い。
- 性格検査では「積極的に動くほうではない」と回答していたが、店長としては広い視野で的確な指示だしができ、部下をしっかりまとめ、全店舗300店のなかで利益率を1位にした。
こういった社員がどこかにいるのではないでしょうか。
すこし時間はかかりますが、このような社員に共通した特性を導き出して会社の採用基準とし、採用試験の場において求職者をその採用基準と照らし合わせて観察することで、合う人材を採用する際の判断に役立つといえます。
重要なのは、「良い人材」ではなく会社に「合う人材」を採用することです。
合う人材の採用は、ミスマッチや早期離職を防ぐことに繋がるでしょう。
あなたの会社にとっての「合う人材」は、一般的な、従来の採用基準だけで決めることはできません。
まとめ
「採用・育成・定着」は人事の要ですが、有効求人倍率(2019年1月時点)が2.13倍という数字を記録している現在、採用に関しては、もはや人事だけではなく企業レベルの課題になっているといえます。
更にいえば、新卒を一人採用する際の平均採用単価は50万を超えますが、若手の早期離職が増えてしまうと、採用コストは増える一方です。
また、新卒社員にとっても、早期離職してしまったことが原因で「こんなはずではなかった」「もう自分に自信がもてない」という負の感情がいつまでも残ることになるため、若手の早期離職は企業にとっても求職者にとってもまさに悲劇でしかありません。
採用の段階で少しでもミスマッチを減らすことは、企業にとっても求職者にとってもプラスとなります。
特に企業にとっては、採用後の社員のスムーズな育成・定着の実現に繋がるといえます。
ぜひ、皆さんの企業に合う人材を採用する手段として、これらの採用試験を取り入れてみてください。
採用試験では、新卒採用・中途採用関わらず、どこの企業でも集団面接・個人面接を実施していると思います。