中小企業には「総務部人事係」しかなく、人事部がない企業も珍しくありません。
しかし、従業員が10人以上になったら、必ず人事部を立ち上げる必要があります。その際、人事部を統括する人事部長が必要となります。
本コラムでは、人事部長に向いている人の特徴だけでなく、人事部に向いている人、向いていない人も含めて、解説します。
CHROという役職が注目を集めている通り、人事部を統括する管理職や経営陣は必要不可欠です(CHRO≒人事部長とすることもあります)
人事部に在籍する方や人事部でキャリアを形成していきたい方にもおすすめの内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
人事部の仕事について
人事部の仕事は採用活動のほか、人材育成、労務関連業務、入社・退職の手続きなど多岐にわたります。今一度、人事部の仕事を整理しましょう。
採用活動
採用活動には新卒採用、中途採用、パートタイムや契約社員など有期雇用採用などさまざまな種類があります。
人事担当者は、他部署と連携して、必要な人材を定義し、採用計画に基づいて、採用活動をしなければなりません。
人材不足が続くと、業績悪化や社員の業務負荷が大きくなり、社員の退職や生産性低下につながります。
人事部では、自社に合う社員を明確に定義し、必要スキル、採用人数を割り出し、会社の方針と照らし合わせながら適切な採用活動を行います。
新卒採用だけでも以下の業務があります。
人事は、求職者のミスマッチを減らすために、どのような人材を雇用するべきか、適切な求人内容を発信し、日々更新を続けなければなりません。
労務関連業務(給与計算や労働契約関連)
人事労務の仕事は、給与計算、各種保険や退職の手続き、勤怠管理、福利厚生など多岐に渡ります。
専門知識が必要な業務となる社会保険労務士と連携して、法令に則った業務手続き、対応を行います。
能力開発を目的とした研修の実施
企業は成果を出せる社員を何人育成できるかで、その後の事業拡大に大きく影響します。
社員の適性や役職に応じた研修を実施することも人事の大切な仕事です。
多くの中小企業では若手社員への研修は行っても、ミドルマネジメント層である管理職研修には消極的な傾向があります。
しかし、企業の成長や社員の育成には管理職の育成スキルが必要不可欠です。
そのため、本来であれば、どの社員よりも管理職育成を目的とした管理職研修に力を入れるべきであり、近年では、管理職育成に力を入れる中小企業も増えています。
人事異動(適材適所におけるジョブ・ローテーション)
単なるルーティングではなく、適材適所へ人員転換することも人事部の重要な仕事です。
本人からの要望やヒアリングを通して、経営戦略と各部署との調整を経て、適切な人事異動が組み立てる必要があるため、人事担当者には高度なコミュニケーション能力が必要となります。
また、新卒社員などの配属先を決める場合、本人のキャリアにも大きく影響するため、特に慎重に考えなければなりません。
会社全体のバランスや、本人の適正など総合的に考慮して、検討する必要があります。
人事評価
昇進・昇給などを含めた人事評価は、公正公平な人事評価制度の下、適切に行わなければなりません。
人事担当者は上司が主観的な人事評価を行なっていないか、被評価者が自己評価を過大評価、過小評価していないか、管理職の人事評価に対して支援を行う必要があります。
また、定期的に人事評価制度の見直し、策定をすることも求められます。
公平性を保ち、社員の成長意欲を高め、"成果を出す社員を輩出する"人事評価制度を策定することが重要です。
各部門の管理職と連携しながら、評価者である管理職の育成にも力を入れなければなりません。
人事部に向いている人、向いていない人の特徴
新入社員から人事部に所属することもありますが、多くの人が他部署から引き抜かれた、実績のある優秀な人材とされています。
将来的に人事部としてキャリア形成を行いたい方は、人事部に向いている人、人事部に向いていない人の特徴を理解しておきましょう。
人事部に向いている人の特徴
人事部に向いている人の主な特徴は以下の通りです。
人事部に欠かせないスキルのひとつがコミュニケーション能力です。
採用面接で、面接者の本音を引き出さなければなりません。
また、社員からの質問や相談を適切に理解して、解決に受ける機会も多いため、他部署に比べてもコミュニケーション能力が重視されます。
また、人事部は人事評価をサポートする立場でもあります。
上司の主観で評価されていないか、被評価者が過大評価、過小評価がされていないか、会社全体を俯瞰して社員を平等に接する力量が必要です。
人事担当者は物事を俯瞰して見れる能力も重要になってきます。
さらに、人事部には会社方針と各部門の意見を調整する折衝力も求められます。
人件費削減と現場の深刻な人材不足という相反する課題に対して、お互いにとって、Win-Winな着地ポイントを探ります。
人事部が持つ人事権は、大きな会社になればなるほど権力が大きくなります。人事権は時に社員の人生を左右してしまうほど強大な権力となります。
そのため、人事権という権力を正しく理解し、どの部署よりも責任感を持つ必要があります。
人事権の私物化は人事部として絶対に行ってはいけません。
人事部に向かない人の特徴
人事部に向かない人の特徴は主に以下が考えられます。
人事部長の仕事内容について
人事部長は、組織内の人事部門を指揮し、人事戦略や方針の策定、実行を担当する上級管理職です。
人事部長は経営陣や各部門の上級管理職と連携して、人的資源の管理や戦略的な計画に関する重要な意思決定を行います。
一般的に人事部長の役割や業務は以下が該当します。
企業規模が大きくなれば、人事部長の決裁権も大きくなる傾向があります。
また、人事部長はホームページや外部メディアにも露出することが多く、特に採用活動において、会社の顔としての役割を果たすこともあります。
人事部長に向いている人の特徴・資質
人事部長は上級管理職です。
他の部門と同様に統括者としての役割を理解していることや企業の人事戦略を円滑に進めるための部署作りも重要な役割となります。
また、人事部長に求められる特徴や資質は以下の通りです。
人事業務に関する専門性は人事部での実践経験が重要となります。
同時に人事の視点から中長期的な経営戦略(人事戦略)を立案し、実行する能力も必要です。
人事部長は経営会議にも出席する機会が多いため、経営陣の意向や方針と現場の社員の橋渡し役としての役割を担う、高度なコミュニケーション能力が求められます。
人材育成や人材定着といった、現在、日本企業が抱える重要な人的な経営課題を把握・整理し、解決する課題解決能力が求められます。
他の経営幹部と同様に、社内で人事部長を育成するためには、幹部候補である管理職の育成が欠かせません。
大橋高広は100社以上の支援実績、1,500名以上のクライアントスタッフ面談実績を誇る、中小企業を対象とした人事改革のプロフェッショナルです。
人材定着が生まれる職場環境の改善、社員が成果を出せる人事評価制度の設計、管理職・リーダー職研修に強みを持ちます。
人事部は一朝一夕で作り上げることは難しいと言えます。人材育成や人材定着に関するお悩みの経営者様はお気軽にご相談ください。
まとめ
従業員が10人以上になれば、必ず人事部を作り、人事部を統括する人事部長の役割が重要となります。
人事部長には高いコミュニケーション能力のほか、調整力や決断力も必要なため、社内でも優秀な人材が担う役職でもあります。
人事部長は花形であると同時に会社の存続を担う、責任重大な役職です。
人事部長をキャリアパスとして描いている方に本コラムが参考になれば、幸いです。
企業経営になくてはならない人的資源の確保・定着は、人事部の重要な仕事のひとつです。