今後の中小企業は人手不足による企業経営が悪化する機会が増える中で、中小企業こそ独立した人事部を立ち上げることが運命の別れ目となります。
本コラムでは、人事部と総務部の違いをわかりやすく解説し、中小企業が中長期的な経営を行えるヒントを解説します。
人事部と総務部の役割
人事部は総務業務の一部ではなく、CHROという役職が存在するように、人事部は中小企業の成長や持続的経営を実現する上で重要な役割を持つ部署です。
まずは人事部と総務部の役割を明確にしましょう。
人事部の役割とは
人事部とは、組織や企業内で人材に関する業務を担当する部門です。
従業員だけでなく、採用候補や求職者も含めてた「ヒト」の扱う仕事すべてを担う部署となります。
人事部の主な役割は以下の通りです。
中小企業に関わらず、優秀な従業員の定着を図るためには、管理職の育成や職場環境の改善が必要不可欠です。
中小企業が優秀な人材の獲得・定着を図る上では、従業員の育成・能力開発が重要な業務内容となってきます。
先述した通り、人事部の業務は「総務部人事係」の規模では最適な労働環境の構築や人材育成、定着を向上させることは難しいと言えます。
採用難と言われる時代において、会社に合わない人材を採用しない、優秀な人材が会社に定着してくれるなど離職率の改善においても中小企業こそ人事部を独立させることが重要です。
▼中小企業の経営者からよくある質問▼
総務部の役割とは
総務部とは、組織や企業内で様々な一般的な業務を管理・運営する部門です。
主な役割は以下の通りです。
株主総会の企画・運営も総務の業務とされています。このように、人事部と総務部では業務内容も求められるスキルも全く異なります。
中小企業こそ人事部を作ったほうがいい理由
大橋高広は「中小企業は従業員が10人以上になった場合、必ず人事部を作りましょう」と推奨しています。
その理由は「総務部人事係では、社員の不満を解決できない」からです。
総務部の役割は主に労務関連の仕事です。
そのため、総務部の人間は労務関連の業務スキル(書類作成能力や管理能力)を有する人材が多く、本来、人事部に求められる業務スキルの「社員の希望や不満を把握する」ためのコミュニケーション能力が不足しています。
社員の希望や不満を聞き出し、人的経営課題を発見して解決していくことが人事部の重要な仕事であり、職場環境の改善が第一のミッションとしなければなりません。
社員の退職が相次ぐ会社では、人間関係の不和や職場環境がよく理由として挙げられます。
優秀な社員の定着を図る上では、職場環境の改善は最優先課題であり、解決できる能力を有する人材中心に人事部を作り、改善に努めなければなりません。
中小企業が人事部を作るメリット
中小企業が人事部を作った場合、7つのメリットを得ることができます。
社員のモチベーションがアップする
「うちの社員は最近やる気がないんだ」という社長が多くいらっしゃいます。
モチベーションアップなどの研修会に参加させても現場に戻るとまたモチベーションが下がります。つまり、現場の根本的な問題を解決していないことが原因です。
人事部を作れば、社員とのコミュニケーションを図る時間を設ける、不公平な評価制度の改善できるなど現場の根本的な課題を解決するための施策を実施できます。
社員一人一人が見えるようになる
一般的に社員の数が10人程度になると、人の目では行き届かなくなると言われています。
そもそも社長が経営業務以外で、社員ひとり一人の不満を聞き、揉め事を調整することは不可能です。
人事部をつくり、人事制度を運用して記録を残していく(人事データを蓄積していく)ことで、人事分析ができるようになります。
社員が辞めなくなる
社長が「人事部を作る」という意思表示することで、従業員に「現状の職場環境の改善に取り組む」という意思が伝わり、社員が退職を思いとどまった事例も存在します。
中小企業の社長の多くは退職理由は「給料が安いから」と考える方が多いですが、実際には、同業界で転職をしても月給が大きく変わることはありません。
社員が退職する大きな理由が「職場の人間関係」です。
「社長についていけない」「上司や同僚とうまくやっていけない」「職場の人間関係に耐えらえない」といった課題は総務部人事係の片手間では解決できません。
つまり、人事部を作ることは「職場の人間関係」を改善し、社員の定着にもつながることを意味します。
合わない社員が去っていく
人事部を作ることで、正しい人事評価制度の元を社員を公平公正に評価できます。
現実では、残って欲しい社員ほど退職し、退職してほしい人材が会社に残ってしまいます。
しかし、適切な人事評価制度を導入し、公平公正な人事評価を下すことで、優秀な人材ほど定着でき、逆に低評価の人材ほど会社を離れることになります。
社長の主観的判断ではなく指標をもとに判断するため、透明化も図れ、職場環境の改善や社員の離職防止にもつながります。
採用募集費が削減できる
人部を作ることで、採用費用にお金をかけなくても人を採用できるようになります。
人事部が職場環境を改善することは、リファラル採用(自社の社員から友人や知人などを紹介してもらう採用手法)にもつながります。
つまり、職場環境に満足している従業員は、会社が希望する人材を友人や知り合いの中から見つけ出し、紹介してくれる機能が生まれます。
中でも「人間関係が良好な職場」には、会社が希望する人材が集まりやすく、社員の定着にもつながります。
技能承継ができるようになる
技能承継を課題に考えている社長の中には、「教えるほうのベテラン社員のほうが悪い」「教えられる社員の方の覚えが悪い」などおもっている方も多くいらっしゃいます。
技能承継ができない根本的な原因は、技能承継が「仕事」になっていないからです。技能承継には納期もなく、やらなければ説明が求められるだけです。また、技能承継をしても給与面の処遇がありません。
さらにベテラン社員であればあるほど、既得権益を守ろうとします。
「自分がいなくては会社が回らない」状況は、ある意味本人にとってとても好都合です。こういったことを改善するために人事評価制度を使います。
人事評価制度に技能承継を「仕事」と明記し、その成果を評価し処遇する仕組みができていれば、円滑に承継が進んでいきます。
会社が成長する
会社の成長は社員の成長です。
社員の成長には、人材育成に責任を持ち、人材育成こそが純然たる仕事とする管理職の存在が不可欠です。
中小企業の場合、OJTを中心とした直属の上司に人材育成を丸投げすることが珍しくありません。しかし、本来、社員の育成は管理職育成も含めて、人事部の仕事です。
組織を横断し、社内コミュニケーションが停滞する原因や見つけ出し、管理職、社員全ての従業員に適切な人材育成を専門的に行うことが人事部の役割でもあります。
人事部という仕組みを使って、社員の成長を促していかなければ社員はおろか、会社の成長も止まってしまいます。
大橋高広の人事評価制度設計サービス
中小企業が人事部を作ることで、適切な人事評価制度を基に人材育成や職場環境の改善に繋がります。
大橋高広はこれまでに100社以上の支援実績、クライアント様のスタッフ1,500名以上との面談実績があります。
その事例から現場のスタッフの考え方を熟知した上で、コンサルティングや研修を提供させていただきます。
その中でも人事評価制度設計は、社員を育てるための重要な指針となります。
貴社に合った完全フルオーダーの人事制度を設計し、現場での実践に強いマネジメント研修も承っております。
人材獲得、人材の定着を課題に抱えている、中小企業の経営者様はお気軽にご相談ください。
まとめ
総務部人事係という組織は、中小企業の成長を阻害しているといっても過言ではありません。
「社員が10人以上になったら、人事部として独立させる」ことが、その後の会社の成長につながります。
人事部は会社の一番大切な財産である「ヒト」を採用、育成、評価するプロフェッショナル組織です。
これを肝に銘じておきましょう。
中小企業では、独立した人事部がなく、総務部人事係とする企業がいまだに数多く存在しており、人材採用に大きな悪影響が与えています。