職場環境の改善を行う上で重要なKPIが従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)です。
しかし、従業員満足度はあくまで調査のひとつであり、従業員満足度アンケートを実施したからといって、従業員の本音を聞き出せるわけではありません。
今回は職場環境の改善における管理職の役割や改善方法を解説します
アンケートでは”従業員の本音”を聞き出せない
どんなに優れた人事評価のクラウドシステムやモチベーション管理システムが世の中に溢れていますが、一向に職場の問題が解決しないケースが増えています。
これは退職予定している会社員以外にアンケートを取れば、「会社が好き」と回答するに決まっているからです。
また、退職する会社員に退職理由を聞いても「賃金が安い」と答える割合が多いといえます。
しかし、これを真に受けて、「給与を上げれば退職する社員が減る」と考えて、見当違いな対策を行う企業は珍しくありません。
「賃金が安い」という退職理由は退職者が辞める会社に気を使っているだけであり、本音ではありません。
退職する従業員は「賃金が安い」といえば、人事担当者も納得してしまい、引き留めることができないと考えているからです。
つまり、「賃金が安い」というのは従業員の本音ではなく、単に使い勝手が良い退職理由に他なりません。
日本の従業員満足度は最低レベル!?
2005年、国際比較調査グループISSP(International Social Surbey Progamme)の調査で、従業員満足度は世界32カ国の中で28位でした。
また、2015年の調査では、10年たち、さらに、従業員満足度の合計が73%から2015年では60%に下がっていることから、未だ、改善はできていないことがわかります。
これは人事部をはじめ、多くの経営者が従業員が満足できない職場を把握できないこ都が原因です。
不公平な人事制度や主観的な人事評価によって、モチベーションチベーションが下がる従業員もいますが、間違った職場環境の改善を行うとモチベーションの高い社員から会社を辞めていくこととなります。
仕事ができ、モチベーションの高い社員が辞めていくことは、ほかの従業員にしわ寄せが向き、様々な悪循環を招く要因を作りだす職場環境ができてしまいます。
”職場の風通しの悪さ”の原因を知る
従業員の本音(不満)を聞き出すには、「なぜ経営者や管理職が”職場の風通しの悪さ”が見えないのか?」という原因を知る必要があります。
その理由は複数あります。
- 部下は上司に忖度し、上司は会社に忖度する
- 日報や社内SNSでは職場の問題は見えない
- 上司は責任のすべてを押しつけられる
日本企業の多くは「チクリ文化」や「ヌケガケ文化」というハードルがあります。
日本には告け口する人を否定的に捉えがちです。
そのため、部下は上司に忖度し、上司は会社に忖度しがちとなります。
しかし、本当の問題は上司や会社も部下や管理職が忖度していること自体に気付かないという点です。
また、日報は作業に関する問題は報告できても、人に関する問題は報告できません。
これも前述の「チクリ文化」や「ヌケガケ文化」というハードルが起因しています。
一方で、社内SNSは連絡手段としては最適ですが、過去の発言が残るため、職場の問題を収集するツールとしては機能しません。
わざわざ記録が残る社内SNSに職場の問題を書き込む人は皆無といえます。
得てして日本企業では職場の問題は上司の責任にされる傾向が強いといえます。
近年では部下が強すぎるため、管理職が指導に及び腰になっているケースも珍しくありません。
経営陣や部下にとって、管理職は一番いいやすい対象のため、管理職のモチベーションは下がっていく一方であり、自然と管理職のモラルも崩壊していきます。
リーダーシップがなくとも”職場の問題”は解決できる
よく「飲みニケーションを取っているから、うちの会社は大丈夫だ」と勘違いする経営陣や管理職が少なくありません。
しかし、飲みの席で「同期のアイツは俺より仕事ができないのに、上司や社長に気に入られているから昇進や給料がいい」といった本音の会話をヒアリングすることはできません。
職場の環境を改善するには、リーダーシップは必要ありません。
”聞き出す”技術を習得すれば、部下の本音を聞き出し、職場の環境を改善できます。
「報連相」を再評価する
上司と部下とのコミュニケーションを成立させるためには、最新のノウハウよりも「報連相」について、今こそ考えてみる必要があります。
「報連相」には以下の強みがあります。
- 進捗を共有することで連帯感を強める
- ミスを早期発見する / スピーディな対応
- 自主性を育てる
- 的確なアドバイスができる
管理職が部下から職場の問題を聞き出す手段として、報連相による対面コミュニケーションが有効です。
クラウドシステムの設置だけで社内の重要な情報は共有できないという点を今一度認識することが大切です。
面談はノンアルコールで行う
前述した「飲みにケーション」は一部の人間が優遇されていると誤解される危険性があります。そのため、特定の部下とだけ頻繁に飲みに行ってはいけません。
現在の職場では、子育て中や介護で時間が取れない方、お酒の席が苦手な方など飲み会に参加できない人などさまざまな人がおり、多様性を重視する時代においてはお酒の席に参加できない人への配慮が必要です。
若者のお酒離れが叫ばれている一方で、飲み会が好きという若手社員も存在します。
そのため、飲み会を開いて親睦を広める際は「自由参加」を前提に現場リーダー発信で行うようにしましょう。
しかし、職場の問題を聞き出すための面談は、基本的にノンアルコールで行うべきです。
面談はサービス残業で行わない
飲食業やサービス業における管理職は数値管理や衛生面の管理、アルバイト採用・シフト管理などの業務があり、面談を実施する余裕がありません。
その結果、面談に取り組む際は上司も部下もサービス残業で行われがちですが、これは間違いといえます。
サービス残業で嫌々面談しても職場の問題は改善しません。
そのため、「面談を仕事化」することが大切となります。
業務終了後に面談を実施する際はきっちりと残業代を支給することで、会社の施策として面談を実施していることが伝わり、上司も部下も安心して取り組むことができます。
従業員が満足できる職場改善:まとめ
従業員が満足できる職場改善にはクラウドシステムや管理職の高度なリーダーシップは必要ありません。
形式だけの従業員満足度アンケートの結果からは職場の問題は見えてこず、日本企業の旧態依然の文化に影響された上司と部下の背景を正しく理解する必要があります。
その上で今一度「報連相」を再評価し、正しい手順に則った対面によるコミュニケーションを行わなければ、職場の問題は可視化できません。
従業員満足度が高い職場の実現は、人事担当者や管理職にとって、永遠の課題といえます。