今、このコンピテンシーを活用した面接手法が注目を集めており、特に中小企業での活用事例が増えているのです。
あの中小企業は、なぜ「挨拶しない人」を採用したのでしょうか?
コンピテンシーとは?
コンピテンシーとは「高業績者に共通する行動特性」という意味です。
企業はコンピテンシーを分析することで、「成果・業績を上げる人の具体的な行動の特徴」が分かるのです。
このコンピテンシーですが、アメリカの大学教授が会社で高業績を上げる社員たちを調べたところ、必ずしも「高学歴」や「試験成績が良い」人たちばかりではないことに気づき、さらに調査を進めたところ発見したものなのです。
例えば、製造業を例にしてみましょう。
たくさんの職人がいる中で、いつも精度の高い製品をつくり、顧客から喜ばれている職人がいたとします。
この人は、とにかく挨拶を全くしません。いつの間にか出社しては、いつの間にか帰宅しているという状況です。
しかし、仕事は完璧なのです。
他にも比較的高い精度で製品をつくる人を観察したところ、やはり同じように挨拶はほぼしないということが分かりました。
ということは、この会社における「精度の高い製品をつくる人」のコンピテンシーは、「挨拶をしない」ということなのです。
コンピテンシー面接に中小企業が注目する理由
コンピテンシーを活用した面接、「コンピテンシー面接」が注目されている理由は「ミスマッチの解消」です。
中小企業における社員一人ひとりの重要性は、大企業の比ではありません。従って「ミスマッチ」による仕事への影響は計り知れないのです。
「十分時間をかけて選考したにも関わらず、期待通りの成果を上げる人ではなかった」
このような苦い経験をした経営者は必ずいるのではないでしょうか。
では、なぜミスマッチが起こったのでしょうか?
それは、会社として「成果を上げる人」がどんな人物像か、そして、求職者がその人物像に合致するかどうかが分かっていなかったことに尽きるのです。
つまり、自社のコンピテンシーが分かっていなかったことが一因なのです。
第1章の例で言うと、「挨拶をきちんとする人」を採用してしまったのです。
というよりも、むしろ「挨拶をしない人」を不採用にしてしまったのかもしれません。
一般的に「挨拶する人」と「挨拶しない人」では、どちらの人を採用するでしょうか。
もちろん、「挨拶する人」だと思います。
しかし、あなたの会社で成果を上げている、精度の高い製品をつくる人は「挨拶しない人」なのです。
ここが「コンピテンシー面接」の肝になる考え方です。
「挨拶」という分かりやすい、極端な例で説明をさせていただきましたが、これまでの面接で行われてきた考え方を180度覆す内容ではないでしょうか。
つまり、コンピテンシー面接とは「一般的に良い」とされる点を基準に判断するのではなく、あくまで「自社の業績に高く貢献できる人が持つ行動の特徴」、すなわちコンピテンシーを基準に判断する面接なのです。
どのようにしてコンピテンシー面接を行うのか
コンピテンシー面接を行うためには、まず何よりも、「コンピテンシー」を見つけなければなりません。
第1章の例で言うと、「挨拶をしない人が高業績者」であることを見つけなければならないのです。
「コンピテンシーモデル」とも言われますが、会社で成果を上げている、業績を上げている人の行動の特徴(行動特性)をつぶさに観察することが求められます。
次に、実際の面接において、どのようにして相手の行動特性を判断すればいいのでしょうか。
ポイントは「質問の繰り返し」です。
- 学生時代に学業以外で取り組んだことはありますか?
- なぜ、それに取り組んだのですか?
- 取り組む中で、何を一番重要視しましたか?
- なぜ、それが一番重要だと思ったのですか?
- 重要視したことについて、具体的にどのように行動しましたか?
- 行動するにあたって、何か参考にしたことはありますか?
従来の面接では、1~3くらいまで聞けば良い方だったのではないでしょうか。
しかし、コンピテンシー面接ではどんどん質問を繰り返すことで「行動した理由、動機」、「考え方」、「実務能力」などを把握し、自社のコンピテンシーモデルに合致するかどうかを判断していくのです。
そして、一連の行動、考え方に矛盾がなく、その行動特性が会社でも再現されると判断できれば、その人は「業績を上げる可能性が高い」ということになるのです。
コンピテンシー面接は嘘を暴く!?
コンピテンシー面接にはもう一つ、大きな利点があります。
それは「嘘を暴く」ということです。ややショッキングな表現ですが、面接においては大変重要なことなのです。
中小企業においては、「新卒採用」よりも「中途採用」というケースが少なくありません。
相手も幾多の面接を繰り返してきている可能性が高いのです。
ということは、いわゆる「面接慣れ」しており、自らの経験、実績を誇張する術も熟知しているかもしれません。
このような場合でも、コンピテンシー面接に基づいた「質問の繰り返し」、「質問の掘り下げ」を行うことで、相手の「真の実力」を把握することができるのです。
まとめ
人手不足による採用難の時代、各社あの手この手で「人材確保」に努めています。
コンピテンシー面接は、そのための手段に過ぎません。
大切なことは、自社に合う人を「採用」するだけでなく、その人を適切に「育成」、そして「評価」する人事制度の構築・整備だということをご理解ください。
人事は、「採用」、「育成」、「評価」で成り立ち、これが機能することで、「良い人材」が集まり、育ち、そして辞めなくなるのです。
あなたは「コンピテンシー」という言葉を聞いたことがありますか?