人事制度と企業理念

人事制度と企業理念
大橋高広

会社をつくるにあたって必須ではないものの、多くの会社に企業理念があるのではないでしょうか。

企業理念は事業を行う上での根本的な考え方です。

この企業理念をどのようにして従業員に定着させていけばよいのでしょうか?

その鍵を握るのが人事制度なのです。

企業理念とは

改めて「企業理念」とは何かを考えてみましょう。

辞書で「理念」と調べてみると、「何を最高のものとするかについての、根本的な考え方」と出てきます。

つまり、「企業理念」とは企業としての根本的な考え方だということです。

企業は「ヒト・モノ・カネ」といわれますが、「モノ」や「カネ」そのものに考えはありません。

ということは「ヒト」、すなわち社長、役員から従業員、パート従業員まで含めた関係者全員の根本的な考え方が「企業理念」と合致していなければならないのです。

仕事上においては、「どのように考えれば良いのか」、「どのように判断すれば良いのか」、「どのように行動すれば良いのか」といった場面があります。

簡単に答えが導かれることもあるかもしれませんが、難しい局面も多いはずです。

その時に何を拠り所にして答えを導き出すのでしょうか。

それが「企業理念」ではないでしょうか。

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人事制度は従業員に企業理念を定着させるためのもの

ところで、企業理念はあるものの、「人事制度」がない会社もあるのではないでしょうか?

特に中小企業ではその傾向が強いかもしれません。

中小企業において、人事制度がない、つまり「人事部」がない理由の多くは「必要性」を感じていないからです。

確かに従業員が少なく、社長自身の目が全体に行き渡っている間は人事部の必要性を感じることはできないかもしれません。

しかし従業員が10人、15人と増えてくるとどうでしょうか。

従業員が増えるということは事業が拡大している証であり、大変喜ばしいことです。

反面、人が増えるということはそれだけ「管理」が難しくなることを意味します。

この点を企業理念に絡めて考えてみると、ひとりひとりの従業員に企業理念を定着させることも難しくなるといえるのです。

もし、社長であるあなたが人事制度など必要ないと考えているのであれば、このような考え方をしてみてはいかがでしょうか。

人事制度は従業員に企業理念を定着させるためのものである。

第1章で申し上げたとおり、企業理念とは企業としての根本的な考え方です。

たとえ従業員が増えたとしても、中小企業が「少数精鋭」であることに間違いはありません。


の少数精鋭の従業員の皆さんが企業理念の元、同じ考え方で行動できるということが、どれだけ会社としての強みであるかは言うまでもありません。

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なぜ人事制度が企業理念を定着させるのか

企業によっては毎朝、企業理念を従業員全員で唱和しているところもあります。

また、従業員の目につく場所に掲示している会社もあるでしょう。

いずれも大切なことではありますが、これだけで企業理念が従業員に定着するでしょうか?

先程まで「お客様最優先」と唱和していたにも関わらず、職場に戻れば「売上数字」のことばかりを叫ぶ上司に対して、部下はどう思うでしょうか。

「品質第一」という掲示を見ながら仕事をしている部下に対して、「コスト」や「効率性」ばかりを求めることが何を意味するでしょうか。

このような日々が続けば、従業員は企業理念を単なるお飾りに過ぎないと感じるはずです。

では、なぜ上司は売上数字やコスト、効率性ばかり求めるのでしょうか。

なぜ部下は違和感を感じつつも、その指示に従うのでしょうか?

それは、上司においても、部下においても、そうすることで会社から評価されるからなのです。

企業である以上、売上を伸ばし、利益を最大化させることは至上命題であり、そのようなことは誰でも知っています。

従って従業員は自ずとそのような行動に走り、評価を得たいのです。

企業理念が「売上最優先」、「コストダウン第一」であれば、それでも良いでしょう。

しかし、そのような企業理念にはなかなかお目にかかりません。

やはり企業理念の多くは、表現方法など違えど、「お客様最優先」、「品質第一」なのです。

このような従業員が感じる違和感、ジレンマといったものを解決するのが「人事制度」なのです。

特に重要なのが「人事評価」です。

つまり、企業理念である「お客様最優先」、「品質第一」に沿った行動が評価される仕組みを人事制度として導入すべきなのです。

具体的には「顧客満足度」を基準にしたり、「品質改善案」の提案・実施状況を可視化するなどして、社員を評価するのです。

まとめ

何度も申し上げますが、「企業理念」とは企業の根本的な考え方を表現したものです。

この企業理念を単なる「お飾り」にするのか、それとも会社全体に真に定着させるのかによって、会社の存続にも大きな影響を与えるはずです。

昨今の企業による不祥事の多発はその典型といえるでしょう。

そして、企業理念を実践できるかどうかの鍵は「人事制度」が握っているといっても過言ではありません。

  • 人事部は本当に必要ないのか
  • 今ある人事制度は企業理念にかなっているのか

今一度、人事制度や人事部に対する考え方を振り返ってみてはいかがでしょうか?

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    大橋 高広
    株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供