しかし、人手不足と言われる時代において、特に中小企業の採用活動は大変厳しい状況と言わざるを得ません。
では、採用において大切なこととは何でしょうか?どうすれば、この厳しい採用活動を勝ち抜いていけるのでしょうか?
採用担当者は、まず現実を直視することが大切!
少子高齢化による人手不足が叫ばれる中、大手の有名企業ですら良い人材を確保することは容易ではありません。
これは新卒採用はもちろん、中途採用においても言えることです。
ましてや中小企業の人材獲得競争がますます激しさを増すことは誰の目にも明らかだと思います。
このような状況の中、中小企業の採用担当者がまず認識しなければならないことがあります。
「中小企業に良い人材は絶対に来ない」
とても辛辣な言葉に聞こえますが、冷静に考えていただくと、この言葉が決してオーバーではないことに気づいていただけるのではないでしょうか。
中小企業においては、定期的な新卒採用を行うケースは少なく、どちらかといえば退職した社員の補充、つまり中途採用というケースがほとんどです。
このケースにおいて「良い人材」とは、高い能力・技術を持ち、即戦力となってくれる人ですが、今の時代にこのような「良い人材」が敢えて中小企業を選ぶでしょうか?
もちろん「全くない」と言い切ることはできませんが、良い人材が応募してくることを期待して採用活動に臨むべきではないのです。
では、中小企業の採用担当者は何をポイントにして、採用活動に臨むべきなのでしょうか。
採用のキーワードは「合う人材」
私は経験上、中小企業の採用担当者は「良い人材」よりも「合う人材」にポイントをおくべきであると考えています。
ここで言う「合う」という言葉には2つの意味が含まれています。
考え方が「合う」
会社には経営において大切にしている「考え方」があると思います。
例えば、製造業において「品質」と「価格」はとても大切なテーマであり、考え方も会社によって違ってくるものです。「品質をより良くするためには価格を上げることもやむなし」という考え方もあれば、「品質も大事だが、価格でライバル企業との差別化を図る」という考え方があってもおかしくはありません。
例えば、「価格重視」の会社に、いわゆる「根っからの職人」気質の人が入ってきたら、どうなるでしょうか?おそらく、この方は社内で孤立する可能性が高いのではないでしょうか。
つまり会社はこのような考え方が「合う」人を採用すべきなのです。
考え方が「合わない」人を採用してしまうと、社内の和を乱したり、ミスマッチを理由に早々に会社を辞めて行く結果となり、会社、社員双方にとって不幸な結果となってしまうのです。
等級基準に「合う」
第1章でも申し上げましたが、中小企業においては新卒採用よりも中途採用というケースの方が多いのではないでしょうか。
言い換えると、退職した社員の補充というケースです。
人事制度が整備されている会社であれば、退職した社員はいずれかの等級に属していたことになるので、中途採用する人においても、当該等級に「合う」ことを採用条件とすべきです。
つまり、等級制度では、各等級にふさわしい能力や人物像が定義されているので、その項目一つ一つが採用条件になるということなのです。
この章では「合う人材」についてお話させていただきましたが、そもそも、あなたの会社に「経営理念」はありますか?
そして「人事部」はありますか?
経営理念が明確でなければ、「考え方が合う」人を採用することは難しいでしょう。
また、人事部がなく、人事制度が整備されていなければ、「等級基準に合う」人を採用することもできないのです。
中小企業においては、「経営理念」や「人事部」のない会社がまだまだありますが、これからの人材難に対応するためには早急に解決すべき経営課題と言えるのではないでしょうか。
「合う人材」の見つけ方
中小企業においては「合う人材」が採用のポイントであると申し上げましたが、求職者が「合う人材」かどうかをどのようにして判断すれば良いのでしょうか?
まず「等級基準に合う」ですが、等級制度において各等級ごとに求められる能力などの基準が明確に規定されているため、その基準に則って見極めることは可能だと思います。
一方、少し難しく感じるのは「考え方が合う」ほうではないでしょうか。
例えば面接において、どのような質問をすれば、求職者の考え方が分かるのでしょうか?
単刀直入に聞くこともできますが、早急に職に就きたいと考える求職者は、その場しのぎの、当たり障りのない回答をする可能性もあります。
では、どうすれば良いのでしょうか?
こんな時は、「行動に関する質問」をしてみてはいかがでしょう。
行動は「考え方」の表れであると言われます。
従って、「なぜ、そう行動したのか?」といった質問を繰り返すことで、求職者の考え方が見えてくるものなのです。
「なぜ、その会社に入社したのか?」、「なぜ、その資格を取得したのか」といった質問から考え方を推測することもできるでしょう。
さらに、「人生で一番嬉しかったこと」や「逆に一番悲しかったこと」を質問し、その回答に対して「なぜ、それが一番なのか」といった質問を繰り返すことで、考え方を推測することもできるのです。
なお、面接においては質問内容にも配慮が必要であり、あまりにプライバシーに踏み込んだ質問などは避けなければなりません。
採用担当者はこの点を理解し、節度ある質問で対応することも大変重要なことです。
まとめ
採用担当者として少しでも能力の高い、即戦力の人材に入社して欲しいと思うのは当然のことだと思います。
しかし、会社には長年の経営活動によって培われた「色」や「風土」といったものもあるはずです。
そして、その根底にあるのが「経営理念」かもしれません。
いくら能力が高くても、企業風土になじまない人にとっては、職場がストレスの原因となり、本来の力が発揮できないことになるでしょう。
また、会社としても時間やコストを掛けて採用した人が本来の力を発揮できず、最悪の場合、早々に会社を辞めていったのでは全く意味がありません。
中小企業の採用担当者は「良い人材」よりも「合う人材」に目を向けることが大切なのです。
人事部の重要な役割の一つに「採用」があります。