人事評価システムを本当に役立つものにするには?

人事評価システムを本当に役立つものにするには?
大橋高広

「人事評価」と「システム」、一見すると縁遠い気もする二つの言葉ですが、それも昔の話。今では、人事評価とIT(情報技術)の連携が進んでいます。

一方で、せっかくIT化したのに手間とお金だけが掛かり、全く役に立っていないという声も聞こえてきます。

何が原因なんでしょうか?

そもそもIT化とは?

ITという言葉を聞いただけでアレルギー反応を示す方がいるかもしれませんが、今の時代、どこの会社でもパソコンインターネットは利用していると思います。これも立派なIT化です。

中小企業においても、大企業のように一人一台とまではいかないものの、事務所には何台かのパソコンがあるのではないでしょうか。

つまり、会社の規模に関わらずIT化は着実に進んでいるのです。

IT化する目的とは?

特に中小企業において、まずIT化の典型としてイメージするのは「お金」に関する仕事ではないでしょうか。

入金、出金、税金に給料、どれも大切な仕事ですが、いずれも「面倒くさい」、「時間が掛かる」、「間違えたら大変」ですね。

つまり、IT化の目的は仕事を、「早く(効率的)」、「安く(経費節減)」「間違えず(ノーミス)」行うことだ言えるでしょう。

人事のIT化はどのように始まった?

人事のIT化は、人事システムの構築と言ってもいいでしょう。

特に中小企業では「人事・給与システム」という形で、専用のソフトウェアを導入するところからIT化が始まったところも多いと思います。

ここで言う人事システムの多くは給与と連携させる必要があるため、「勤怠管理」や「入退社管理」といった、いわゆる定型業務をIT化したものです。

システムを使う上での様々な設定作業を最初に行っておく必要はありますが、一度設定をしてしまえば、あとはクリック一つで作業が完了するというメリットがあります。

先程申し上げた、IT化する目的の3要素が全て達成できるわけです。

IT化にもデメリットはあるのか?

IT化にもデメリットがあります。

簡単なところでは、「2台しかないパソコンのうち1台が壊れた!」、「パソコンを使える社員が病気で休んでしまった」など、大企業では考えられないですが、中小企業にとっては深刻な問題です。

あまりIT化に頼り過ぎていると、このようなデメリットも想定できます。

しかし、本当の意味でのデメリットとは、「非定型業務に向かない」ということではないでしょうか。

最近ではAI(人工知能)の進歩が著しく、様々な分野で研究が行われています。

将来的には、人間にしかできなかった非定型業務もAIに取って代わると言われていますが、まだまだ多くは研究・実験段階というのが正直なところでしょう。

それでは、非定型業務の典型と考えられる「人事評価」、実はIT化に向いていないことになるのでしょうか。

ITで人事評価の課題は解決できないのでしょうか。

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人事評価における課題

人事の仕事は大きく「採用」、「育成」、「評価」です。いずれも大切な仕事ですが、社員にとって関心が高いのは「評価」かもしれません。

と言うのも、人間は誰しも「評価されたい!」と思うものですし、評価は賃金にも直接影響するからです。

一方、評価する側からの視点では、これほど難しいものはありません。

売上や経費などの「業績」に対する評価は数値化できるものが多いですが、「能力」や「情意」といった評価は数値化が難しく、日々の行動から判断していかなければならないのです。

人が人を判断・評価することは、ある意味で究極の「非定型業務」です。

特に少数精鋭の中小企業においては、評価スキルを持った人事の専門家を育てることは難しく、時間も相当必要になります。

つまり、人事評価における課題は「評価者」のレベルアップにあるのではないでしょうか?

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IT化で人事評価の課題を解決できるのか?

人事評価という仕事を少し分けて考えてみましょう。

  • 行動記録
  • 行動記録の保存・蓄積
  • 評価

このように分けてみると、非定型業務と考えられていた人事評価の中にも、IT化できる部分が見えてこないでしょうか。

それは、「行動記録の保存・蓄積」です。しかも、「行動記録の保存・蓄積」は評価者のレベルアップにもつながるのです。

例えば、定期的に評価者同士が集まり、人事評価の問題点などの共有を行う「評価者会議」と呼ばれるものがあります。

人事評価においては非常に大切なイベントです。

この会議で共有される情報には当然、日々の行動記録も該当します。

行動記録の共有を通して、他の評価者はどういう視点で行動を記録しているのか、社員がどのように成長していったのかなどが明確になり、評価者のレベルアップにつながるのです。

さらに中小企業においては、社長が最終的な評価をするという場面も想定されます。

しかし、社長は社員の行動を日々観察しているわけではありません。

そこで役立つのが、「蓄積された行動記録」なのです。

時系列に蓄積されたデータは社員の成長過程も明確になり、評価の手助けになるのです。

このように、非定型業務である人事評価においても、部分的ではありますが、IT化で効率的に課題解決ができるのです。

理想的な人事評価システムとは??

冒頭、人事評価のIT化、すなわち人事評価システムを導入したにも関わらず、不満の声があるというお話をさせていただきました。

その不満の原因は、人事評価全体、つまり、行動の記録や評価もIT化しようとしているからではないでしょうか。

評価者、特に中小企業における評価者は「何を、どう記録(評価)すればいいのか」のスキルがまだまだ足りません。

スキルが不足している社員にITという武器を与えても使いこなすことはできないのです。

ITとの相性が良い経理の世界では、元々経理部員が簿記のスキルを持っているため、ITを使いこなすことができるのです。

レベルアップした評価者、およびITが両輪となって機能している、これこそが理想的な人事評価システムではないでしょうか。

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まとめ

今後、ITやAIといった技術が人事評価の世界により浸透していくことは明らかです。

しかし、あくまで使うのは人間です。

つまり評価者です。

本当に役に立つ人事評価システムは、レベルアップした評価者が作り出すものであり、ITはその手助けを行うものなのです。

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    大橋 高広
    株式会社NCコンサルティング 代表取締役社長|人事コンサルタント・研修講師|東洋経済オンライン記事投稿・日本経済新聞での書籍紹介│新刊『リーダーシップがなくてもできる職場の問題30の解決法』(日本実業出版社)Amazonランキング「マネジメント・人材管理」6位│その他著書『バカはブラック企業に入りなさい』(徳間書店)、『人事部のつくり方』(主婦の友社)│人事制度の設計と運用・管理職研修・職場改善研修・新卒研修・若手社員研修など「人事評価制度の設計と運営」を軸に、「組織文化形成・管理職育成・職場改善」など人事全般に関するサポートを提供